《承前》
秋の実りを加工して、冬を豊かに
サトイモの収穫と同時に、鮮度のよい茎(ズイキ)は干しズイキにします。大阪では赤ズイキを使いますが、青い茎を干す地方もあります。
干しズイキは、甘辛く煮て巻きずしの具にしたり、豆と炊き合わせたり和え物にします。生のズイキとちがって歯ごたえもあり、なかなかおいしいものです。
サツマイモは、掘りあげたら2〜3日干してから1個ずつ新聞紙に包んでダンボール箱に詰め、凍てない(凍らない)ように暖かいところにおいて冬中食べますが、干しいもにしておやつにもしました。
大阪の河内地方では、食べ物が不足した時代に「増産イモ」という、収量は多いけれどあまりおいしくないサツマイモをつくっていました。そのイモをよく干しいもにし、「いもするめ」といって子どもたちのおやつにしたそうです。
サツマイモを大きいままで蒸して1pくらいの輪切りにし、風通しのよい陽のよく当たる所に干して乾かします。半乾きの頃から甘くておいしく、よく乾いて固くなるとかるく焼いて食べました。また、サツマイモのポキッと折れるやわらかい茎も、佃煮にしていただきました。
ダイコンも切り干しやたくあんにしますし、カブラやヒノナや漬け菜類も漬物にし、漬物小屋には大小の漬物タルが並んだものです。
わが家の収穫の秋も大忙し
スイカの後片づけをしたとき、接ぎ木の台木に使われていたカンピョウの大きな実が1つ見つかりました。大阪でカンピョウの実を見るのは珍しいので、老人大学の文化祭(11月)に展示しようと保管していましたが腐りが出始め、仕方なく写真に撮ってから干すことにしました。
表皮が硬くて困りましたが、包丁を金槌で叩きながら2p厚さの輪切りにし、硬い硬い皮をむいてから「かつらむき」にして、たこ糸を通して物干し竿に吊しました。思ったより乾きが早く、2昼夜で白くきれいに干し上がりました。初めての挑戦でしたがなかなかのできあがりです。このカンピョウでお正月には巻きずしをつくりましょう。
昨年に続いて少しだけ植えたゴマも9月の終わりに収穫し、大阪の家に持ち帰って乾燥させました。ゴミ用の大きなビニール袋の中でゴマを振るい出したあと、ほこりを取り除いて水洗いし、乾燥させて保存ビンに入れました。香ばしく炒ってすり鉢ですり、おいしい野菜のゴマ和えをつくるのが楽しみです。
私たちの農園では、たくあん用に白首の長いダイコンを50本植えています。30本はわが家のたくあん用(わが家の漬け方はこちら)、あとは友だちの漬物用です。
100本も植えている太くてみずみずしい青首ダイコンは、かしわのつくねと煮物にしたり、おでんやふろふきなどにするほか、せん切りにしてサラダや和え物にしますが、使い残りと葉をいっしょに「きざみ漬け」もよくつくります。大阪ではこれを「もみぐき」といい、薄味でたっぷりいただけるおいしい漬物です。また、でき過ぎたダイコンも無駄にせず、切り干しダイコンにして、年中楽しんでいます。
私たちは、普及員として農村とかかわる中で、春の山菜摘みから始まって、冬のたくあん漬けや味噌の仕込みまで、農産物や山の幸を収穫し加工して生かしきる農家の営みから多くのことを教わりました。
教わったことをできることから一つずつ実践して、農園のあるくらしを楽しみながら、その喜びと楽しさをまわりの人たちにお裾分けできたらと思っています。
今年2月に、大阪府老人大学卒業生のみなさんと味噌づくりをしましたが、そろそろフタを開けてできばえを味わえる時期になりました。待ちきれずに「もう開けてもいいですか」という問い合わせが再三届きます。「夏の暑さで十分に糀(こうじ)が働き、11月の声を聞く頃には最高の味に仕上がるでしょう」とお答えしています。
農園で取れたダイズと「見山の郷」(前出)の農産物加工施設でつくっていただいた糀で仕込んだわが家の味噌も、きっとおいしく育っているでしょう。
新味噌で秋野菜のたっぷり入った「みそ鍋」をつくって、秋の夜長を楽しみたいと期待が高まります。