連載エッセー

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タカナ   箱館山ロープウェー   フキノトウ
一度はシカに食べられたタカナですが、今年の暖冬で新芽をだしてくれました スキー場のゴンドラから。中央に池が写っており、その手前の農地がわが農園です   収穫したフキノトウ。二人にはこれで十分です。余分にとるとフキがかわいそう

■3月の農園 (2007/03/15)

  ちょっと冬らしい日が続いた後の2月10日からの3連休、孫たちと箱館山スキー場に出かけました。山頂のスキー場から見渡すと、はるかに広がる琵琶湖の向こう、真っ白な伊吹山とそれに連なる岐阜、福井県境の山々は冬ですが、眼下に広がる農地は、鋤き起こされた黒褐色の田畑の間に、まだ鋤かれていない田が薄緑色で点在し、春のようにゆったりとした風景でした。

タンポポ
タンポポの花も咲きました

 雪の知らせもなく3月に入った3日の日に、春の香りが味わいたくて近江今津(おうみいまづ)に出かけました。
 箱館山の頂上はもちろん、遠くにかすむ湖北の山々にも雪の気配はすでにありません。山裾に湧き出る泉とまわりの湿地の水は温み、カキツバタが槍の穂先のような葉を一面に立て、柔らかそうなセリが水際をふちどっていました。上着も着ないでセリを摘む愛子の肩を、春の陽差しが暖かく包んでくれます。

 農園では、収穫せずに残しておいたタカナが芯から若い葉を出し、シカにかじられていて芯だけを残していたブロッコリーが節々から小さな葉を出し、その中にかわいい花蕾をつけているのです。芯だけ残っていたシュンギクにもびっしりと小さな葉が出ています。

 暖冬の贈り物、葉といっしょに摘み取ったかわいいブロッコリーとシュンギクは、小川の土手で見付けたフキノトウと湿地で摘み取ったセリといっしょに、天ぷらにして夕食でいただきました。たっぷりと摘み取ったフキノトウで「ふきのとう味噌」もつくり、豆腐と塩ゆでしたナタネの「たねさき」に付けて、春の苦味を味わいました。
 小さくてもそれぞれの個性を主張する野菜と山菜に、自然の豊かさと繊細さを感じることのできた早春の一日でした。

味噌づくり
味噌づくりの様子。
賑やかでそれはもう大変

 3月1日と2日に、大阪府老人大学の教室で「みそづくり」をしました。
1日はOBの方10名、2日は現役の方々28名の参加でじつににぎやかで楽しい会合でした。
 昨年、OBの方々とつくった味噌が好評で、味噌を食べ始めた昨年11月頃からメールやお手紙で「おいしい味噌ができました。ありがとうございます」と、うれしい便りが届くようになり、そのうわさが現役の方々にも伝わり今回の会合になったのです。

 ダイズは近江今津産の「オオツル」、米こうじは茨木市にある農産物直売所「見山(みやま)の郷」の農産加工室で、農家の女性たちに見山産の米を使ってつくっていただきました。
 素性のわかった材料を使って自分でつくり、それぞれの家で秋まで大切に保管してはじめて味わえるお味噌ですから、まさに「手前味噌」です。おいしくないはずはありません。
 この秋には、きっとうれしい便りがたくさん届くことでしょう。私たちも本当に楽しみです。
 なお、こちらに「わが家の味噌」のつくり方を詳しく載せています(ここをクリック!→「わが家の味噌づくり」)。気温の低い3月中ならつくれます。ぜひ挑戦してみてください。一度つくるとやめられなくなるかもしれません。

 退職後5年間、和雄が講師としてお世話になった大阪府老人大学が、この4月から大阪市内に移転し、同時に講座見直しによって園芸環境科が廃止されることになりました。毎年3倍近い競争率の人気講座なのに残念ですが、開設者の意向なのでどうしようもありません。

 和雄は、この5年間で300人近くの修了生を送り出してきました。また、修了生の自主的な研究会も、約300人の会員を擁し、和雄が担当する月1回の講義には250人近い方々の参加があります。これからは、それらの方々へのアフターケアに努めていきたいと思っています。

 そんな思いをOBの方々と話し合い、滋賀県高島市今津町にある私たちの農園を舞台に、月1回程度集まって野菜づくりを楽しむ「服部野菜塾」(30人定員)を開催することになりました。

 3月17日には初顔あわせとジャガイモの植え付けを行う予定です。大阪からは遠隔の地でもあり、どんな活動ができるのかわかりませんが、まずはジャガイモやサツマイモづくりから始め、私たちといっしょに、今津の豊かな自然の中で野菜づくりが楽しんでもらえたらと思っています。

 また、老人大学のOBの方で、すでに農園をやっておられる方には、ご要望があれば「いつでも、どこでも、ボランティアで」、農園に出向いてアドバイスする「野菜づくりの出前指導」を始めたいと思っています。すでに数人の方からご要望があり、4月から実践です。

 私たちが近江今津で野菜づくりを始めて6年目の春を迎えます。野菜づくりよりも虫を追いかけるほうに興味のあった孫たちも、小さな耕耘機が使えるまでに成長し、和雄も老人大学の講師を卒業します。
 この5年間、孫たちも自然とふれ合い、野菜の育つ姿を知って育ちましたし、私たちも農園のお陰で、いろんな方々と交わりを持ち、楽しい時を過ごすことができました。

 「服部野菜塾」が始まることもあり、これからもきっと農園のお陰でステキな出会いがあることでしょう。健康にだけは気をつけて、四季の移ろいをゆっくり楽しみたいと思っています。 





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■4月の農園 (2006/04/15)

 

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シカがかじったダイコン   山の家   ヨシの刈り取り
シカに食べ荒らされた近くの農園のダイコン。今年はどの農家もシカの被害に困っておられます 雪の積もった山の家。昨年に比べると、雪の量がずっと少ない   ヨシの刈り取りは、琵琶湖の冬の風物詩です。少し遠景ですが、わかるでしょうか

■2月の農園 (2007/02/15)

 例年なら、見渡す限り白と灰色におおわれ墨絵のような静けさに包まれる近江今津(おうみいまづ)も、今年は箱館山の頂上に積雪を見るだけです。

 久しぶりに農園に出かけた1月22日、いつものこの時期なら、雪のふとんに包まれて眠っているいるはずの農地に、シカの足跡が幾筋もの道を付け、暖冬のためあちらこちらの畑に残されているダイコンが食べ散らかされて無惨な姿を見せていました。

 昨年の豪雪に懲りていた私たちは、ダイコンやハクサイがシカにかじられかけた12月19日、タカナ以外の野菜を全て収穫して大阪に持ち帰り、ご近所や友人にもお裾分けしました。
 「少しシカがかじっているけど」と大きなダイコンを届けた友人には「シカが食べたダイコンなんて初めて。嬉しいわ」とかえって喜ばれ、「いろいろなお料理にしていただきました。おいしかったわ」と、お正月が終わってからお礼の言葉が届きました。残ったダイコン・ハクサイ・キャベツは新聞紙にくるんでビニール袋に入れ、陽の当たらないガレージの奥に保管しました。

 この野菜たちは、2月に入った今でもみずみずしく、外葉を2〜3枚取れば十分おいしくいただけます。ハクサイは一株ずつ漬物にしたり、温かいシチューにし、ダイコンは煮物やサラダにと、冬の寒さが続く間は楽しめそうです。
 来年も、農園が雪でおおわれたりシカに荒らされないうちに、秋冬野菜たちを大阪に持ち帰って上手に保管し、無駄にしないように楽しもうと話し合っています。

 「寒波到来! 近畿の北部にも雪」という天気予報を受け、雪がベールのようにゆっくりと降りてきて、山々から広がる農地をおおい尽くす風景を想像しつつ農園へ出かけました。2月1日のことです。しかし、箱館山から吹き下ろす風には冬の厳しさを感じましたが、空はあくまでも青く澄み、陽光に温められて上昇する気流に乗って、翼を広げたトンビが円を描きながらゆったりと昇っていきました。あんなに高く昇ったら、雪をかぶった県境の山々の向こうに荒々しい冬の日本海が見渡せるかもしれません。

 農園では、辛みがあるからシカも食べないだろうと残しておいたタカナも、芯の部分に少しだけ紫がかった緑の葉を残すだけになり、春になってから少しでも側枝が取れるかもしれないと思っていたブロッコリーは、丸坊主になるまでかじられた太い芯が並んでいるだけです。

 でも隣の畑では、寒さにいたんで地面に張り付くように枯れているナタネナの芯の部分から、若草色のかわいい葉が出ているのです。「いつでも取ってくださいね」と言っておられたお隣の方のお顔を思い出し、手のひらいっぱいに摘ませていただきました。このナタネナはさっと塩ゆでしてバターで炒め、夕食の魚のムニエルの付け合わせになりました。寒さに耐えた甘味が最高で、「これも暖冬の贈り物だね」と言いながらおいしくいただきました。

 山の家では、庭のあちらこちらがまるで畑にするために掘り起こしたようになっています。イノシシがミミズややわらかい根などを食べるために掘り返したのでしょう。大切にしているクリスマスローズの株も掘り起こされ、スイセンもかわいそうに、球根を冷たい風にさらしながら芽を出しています。「しっかり花を付けてね」といいながら、埋めもどしてやりました。

座禅草
雪の中の座禅草

 大阪への帰り道、近江今津の冬を探して座禅草(ざぜんそう)の群生地を訪ねました。平年なら2月中旬〜3月に花を咲かせるのですが、今年は1月の終わり頃から仏像の光背に似た紫褐色の仏炎苞(ぶつえんほう)が出だしたということです。
 この日には、濃い紫褐色の苞に包まれた黄色く丸い花序(かじょ)が見えるまでに育ち、竹藪の中の沼地に並んで座禅を組んでいました。

 その後、湖岸道路に出て今津の隣町にある新旭野鳥観察センターを訪ねました。遠く湖面の向こうに雪におおわれた伊吹山が輝き、冬枯れた木々とヨシの間から見える湖面には、無数のカモの類やカイツブリが浮かび、水のうねりにまかせてゆれていました。
 コハクチョウを見ることができなかったのは残念でしたが、大きなかたまりになって浮かんでいる鳥たちの向こうには、琵琶湖独特の漁法、「えり」の仕掛けが3ヵ所並び、輝く湖面とともに絵のような琵琶湖の風景でした。「えり」は定置網漁の一種で、竹やヨシや杭を使って傘のような形に網を張り、魚が障害物にぶつかるとそれを避けて進む習性を利用して狭い囲いに追い込み、最後はツボに閉じこめるという「待ちの漁法」で、琵琶湖の限られた資源を大切にする漁法だということですが、琵琶湖の美しさに趣を添える風物詩でもあります。

 湖岸道路を走って高島市安曇川町に入ったところにある広いヨシ原で、背丈の2倍ほどもあるヨシを刈っておられる人たちを見付けて写真に収めました。刈り取られたヨシは束ねてさらに乾燥し、ヨシ簾などに加工されます。刈り取った後のヨシ原は野焼きされ、その灰が肥料になって春にはいっせいに新芽が吹き、美しい緑のヨシ原が蘇ります。そして、琵琶湖の周辺に広がるヨシ原は、野鳥や魚たちの子育ての場になり、人々に豊かな恵みをもたらすのです。

 琵琶湖周辺の自然は人々のくらしの場となり、そこにくらす人々の自然を大切にした営みが動植物を育み続けてきました。自然と人々が溶け込んだくらしが、きっとこれからも大切にされ、未来の人たちに手渡されていくことでしょう。
 湖西の冬を探し求めたこの日は、自然とともにくらすことのすばらしさと、ともにくらすために必要な優しさを再確認する一日となりました。

 2月2日の早朝、山の家のお隣の方から「雪がふりましたよ。25pは積もっています」と電話がありました。雪景色の写真が撮りたくて、「雪が降ったら教えてください」とお願いしておいたのです。

雪の農園 翌日、早速電車で出かけました。幹線道路は除雪されていましたが、農園や山の家周辺は20pほどの雪におおわれ、四輪駆動の軽自動車では畑に近づけません。

 しかし、肌を刺すように冷たいけれど、湿気を含んだやわらかい風に吹かれて白一色の風景の中にいると、近江今津の冬にはやっぱり雪景色が似合うと納得する思いです。帰りには座禅草の群生地に立ち寄り、雪におおわれた湿地のあちらこちらに、周りの雪を溶かして顔を出している可愛い姿も写真に収めました。





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■4月の農園 (2006/04/15)

 

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たくあんを漬ける   雪の比良山系   冬の収穫
暮れに大阪の自宅でたくあん漬を漬けました。よく干したダイコンがしんなりしています 農園に向かう途中、雪をかぶった比良山系の雄大な連なりが広がります   お正月用の収穫。7、8種類はあるかな。ご近所に配りましたが、ダイコンとハクサイは今も連日食卓に

■1月の農園 (2007/01/15)

 大阪の家の物干しに12月5日から干してあったたくあん用のダイコンが、10日ほどでおおよそ干し上がりました。頃合いの太さのものを曲げると円が描けるようになり、葉も緑色を保ってきれいな干し菜になっています。

 よい天気に恵まれた12月16日、朝から半日かけてたくあんを漬け込みました。
 しっかりと重い重石をのせておいたので19日には早々と落とし蓋の上まで水が上がり、重石を少し軽くしました。その後もときどき様子をみていましたが、たっぷりと水を上げて少しよい香りがするようになった26日、がまんできなくて、細めのものを1本取り出しました。まだ漬かり具合は浅いのですが、切り口は透き通るようになっていて歯切れもよく、塩加減もちょうどよいのです。正月になればもっとおいしくなると楽しみになりました。(わが家のたくあん漬はこちら

 この冬初めての寒波到来と報じられた12月19日、農園に残してある野菜たちがシカに食べられているのではと心配になって農園へ出かけました。

 名神高速道路を京都東インターチェンジで降りて、湖西道路を20分ほど走ると旧志賀町(現大津市)に入ります。突然視界が開け、車窓前方に雪化粧した比良山系が雄大な姿を現します。展開する風景の彩りに四季折々の違いはあっても、この地点にくるたび、現実の世界から異次元に入ったような感覚に襲われるのです。

 時間が走り去るような都市の世界と、自然の懐に抱かれてゆるやかな時間の流れを残している農村の間には目に見えない壁があって、この壁を抜けたとき何となく空気の変化を感じ、心が波立つのかもしれません。
 この日、研ぎ澄まされた空気の中にそびえる雄大で真っ白な比良の山容にふれたとき、いつも感じていた不思議な感覚をはっきりと自覚し、心のふくらみを抑えることができませんでした。
 私たちの山の家と農園も、この不思議の壁を超えたところにあります。

 山の家のまわりの林は高い梢に紅葉した葉をほんの少し残すだけになり、見通しのよくなった林のはるか向こうに琵琶湖の湖面がわずかにきらめいています。自然のままの庭にはフユイチゴの濃い緑の葉が伸び広がり、小さなルビーの粒が10個ほどもくっついたような、かわいい実を付けています。幾つかの実を摘み取って口に入れると、口中にぷちぷちとした感触と甘酸っぱさが広がります。この実を使ってイチゴソースやイチゴ酒をつくったら、きっとステキな赤色でしょう。いつか試してみたいものです。
 山野草の本を開いてみると、フユイチゴの葉や根には薬効もあり、乾燥させてお茶にすると胃腸によいとありました。

 箱館山の頂上と谷筋も白くて雪が積もっているようです。
 思った通り農園はシカの訪問を受けていました。広い野間のあちこちにある畑には、暖冬のために野菜がたっぷり残っています。そのためでしょうか、丸ダイコンの肩やハクサイの柔らかいところがかじられてはいましたが、思ったより被害が少なくて済みました。しかし、雪の下で春までおいて、甘くなったところを食べようと楽しみにしていたニンジンが掘られているのです。土にしっかり埋まっているのに、シカがどのようにして掘り上げたのか不思議です。「よほどニンジンが好きなんだね」と二人で感心してしまいました。ニンジンが大好きなのは馬だけではなかったようです。

 シカに食べられてしまわないうちに、また、昨年のように大雪に覆われてしまわないうちに大阪に持ち帰ることにして、菜類以外の野菜を全て収穫してしまいました。

ネギにかけた片屋根 山や集落の近くにある農家自家用の野菜畑は金網や丈夫なネットで囲われ、シカやサルやイノシシから大事に守られています。冬の野菜を確保するための農家の智恵でしょう。とくに柔らかいネギには雪や風で折れてしまわないように日裏のほうにワラなどで片屋根がかけられています。小春日のような陽差しの中でネギが暖かそうに見えました。
 
 昨年は1メートルを超える雪に覆われ、野菜の収穫もままならなかったのに、今年の近江今津(おうみいまづ)は雪のない暖かい正月でした。きっと、農家の方たちも新鮮な野菜をたっぷり使ったお料理で、おいしいお正月を迎えられたことでしょう。

箱館山2007 箱館山2006 2006年豪雪
今年の箱館山 昨年の箱館山 昨年はこのくらい積もりました



 わが家でも、青森から帰ってきた息子の家族と大津から帰ってきた娘の家族、それに、グループホームから久しぶりに帰ってきた妹を入れて総勢12人のにぎやかなお正月で、農園の野菜たちが大活躍しました。

 ちょっとはりこんだ大きめの鯛の塩焼きと筑前煮風に炊きあげたお煮しめを中心に、農園で取れたダイコンとニンジンに干し柿を入れたなます、そして黒豆・かずのこ・ごまめのお祝儀ものと、年末からつくり置きしていた千枚漬けや赤カブの酢漬けに、孫たちの大好きなハムやソーセージと生野菜の盛り合わせも用意しました。お雑煮には白みそ仕立ての中に、シカの取り残した金時ニンジンの小さな梅の花を浮かべました。
 農園で1個だけでき、細長くかつらむきにして干し上げておいたカンピョウも巻き寿司に入れました。滑らかな口触りなのに歯ごたえもあり、なかなかの好評。おいしくなったたくあんとともに自慢話の材料になりました。

 今は「コックさんになるんだ」といっている小学3年生の男の子に手伝ってもらいながらの食事準備も楽しく、食事をしながら孫たちの成長ぶりや子どもたちの仕事の様子、妹のグループホームでの体験などに話はつきず、忙しいけれどステキなお正月でした。
 あっという間にお正月も終わり、孫たちが帰っていった後、今年も体に気をつけながら思いっきりよい時間を持ちたいと、二人で楽しく農園の計画づくりをしています。




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■4月の農園 (2006/04/15)

 

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遠い積雪   赤カブラの収穫   ダイコン干し
農園から福井県側を望むと、山並みに雪がつもっています お隣の農園の赤カブラ。自由に収穫するように言われていて、ありがたく頂戴   ご近所の農家がダイコンを干していました。なんとダイコン泥棒が横行しているとか

■12月の農園 (2006/12/15)

 夜のテレビで放送された「滋賀県高島市今津の石田川沿いで、農家の人が熊に襲われ3週間のケガをした」というニュースに驚いたのが11月25日。その翌日、「たくあん用のダイコンが欲しい」という友だちの希望もあって農園へ出かけました。

 どんよりと曇った空におおわれてはいましたが、比良山系は紅葉の盛りです。植林された桧や杉の濃い緑と、とりどりの赤や黄色の錦とがくっきりと染め分けされてモザイク状に山々をおおい、最高の秋を表現しています。ときどき雲の切れ間から射し込む陽の光は、琵琶湖面を丸く輝かせたかと思うと、サッと山々に光を投げかけます。そのとき、錦は目覚めたように輝きを増し、またすぐに落ち着きを取り戻します。

 わき見運転にならないように気を付けつつ、まわりの景色を楽しみながら山の家に着き、車のドアーを開けようとして熊のことを思い出しました。秋の林にすっぽりと包まれた山の家のことです。辺りに熊がいるかもしれません。周囲を見回し、様子をうかがってからドアーを開けました。

 前日、熊が出たという石田川沿いの竹林は、山の家から1.5キロメートル、農園からは1キロメートルほどしか離れていません。山の家の近くで定住されている方から「夕方から朝にかけては、家から出ないようにしています」というお話も聞きました。農園でも、しばらくはまわりに気をくばりながら作業をすることにしましょう。

シカに食べられたアズキ
シカに食べられたアズキ

 農園に着いて驚きました。11月13日にきたときに、まだ少し青いサヤが残っていたので、次回にと収穫を伸ばしていたダイズが裸の木だけになって寒そうに並んでいるのです。まわりの畝に、小さくて丸いシカのフンがかたまって落ちています。このダイズは大粒でおいしく、味噌と煮豆用にと楽しみにしていたのに本当に残念です。株元に残っていたサヤをていねいにもぎ取ってみたら、何とか来年のタネだけは確保できそうですが、「今年はシカのためにダイズをつくったみたいね」と二人で悔しがりました。

 その後、農園の隣の畑で赤カブをつくっておられる農家の作業場を訪ねると、「服部さんとこのダイズもやられてましたなあ。このあたりのダイズは軒なみシカにやられてますねん。それだけとちがいまっせ。干してあったダイコンが下の段だけ盗られてしもて、それでみんな家のそばへ移してますねん。これは人間の仕業です」という話を聞きました。写真を撮りたいと思っても、干し場にダイコンのない理由がわかりました。下の段の干しダイコンだけいただいていった泥棒さんは、自宅用のたくあんを漬けたのでしょうか。

青首ダイコンを洗う
青首ダイコンを洗う。冷たい水で30本も洗うと手の感覚がなくなります

 農園を訪れてくれた友だちのために、いっしょに漬物用のダイコンを25本ほど抜きました。細くて長いこのダイコンは、青首の太いダイコンよりしっかりと土にくい込み、抜くのも力仕事です。なかなか抜けないので二人で引っ張って、折れてしまったと騒いだり、ふた夫婦4人での楽しいひととき、曇り空の何処かでシュルシュルとトンビが笑っていました。

 食べることの大好きな友だち夫婦が、ダイコンの上にハクサイ、キャベツ、タカナ、コカブラ、シュンギク、ミズナとピーマンをのせ、野菜満載の車で帰っていきました。魚の大好きなこの夫婦のことです、きっと帰りに琵琶湖の魚を扱う淡水魚の専門店に寄っていることだろうと思っていたら、翌日、琵琶湖のエビジャコとダイコンを炊き合わせたおいしい煮物がわが家に届きました。

 私たちも、孫たちに届けたいカリフラワーとブロッコリーなどを収穫し、車のトランクいっぱいに野菜たちを詰め込みました。わが家のたくあん用のダイコンは次の機会に収穫する予定ですが、早くしないとダイズを食べ終えたシカたちのご馳走になってしまうかもしれません。

つくり方はこちら⇒クリック

 畑仕事を終えて、道具などを置き忘れていないか気を付けながら畑をひと巡りしたとき、腐ってしまったと諦めていたショウガを2株、枯れかけた草の中に見付けました。掘り起こしてみると、10pほどのでこぼこしたショウガが2つ出てきたのです。収穫するのが遅かったため、3割ほどは腐っていましたが、思いがけない収穫物に感激です。このショウガは、薄切りにして乾燥させてから粉末にし、1年間料理や飲み物に使いたいと考えた愛子がせがんで植えたものだったのです。今年はほんの少しの収穫物なので、甘酢に漬けてお正月のお寿司にそえましょう。来年こそよい収穫が得られるように、腰を入れて栽培しようと思います。

 ついでに、小さかったので残しておいたサトイモ2株も掘り起こしました。子イモは小さいものがほんの数個ついていただけですが、親イモは翌日のおでんの具になり本当においしくいただきました。

 帰りは思いっきり秋を楽しもうと、鯖街道を通ることにして出発しました。鯖街道は、若狭の鯖を京の都へ運んだ旧街道です。日本海に面した若狭を出て比良山系と京都の山々の間、滋賀県高島市朽木(旧朽木村)をくねくねと抜け、京都大原の里に出る谷間の道です。寄り添うように流れる清流と両脇に迫る高い山々の紅葉を楽しみながら、天下一品だと評価している「朽木そば」と栃もちに舌づつみを打ち、花折れ峠で贅沢な鯖寿司を買い込みました。この鯖寿司と、取れたての野菜をいっぱい入れた粕汁がこの日の夕食です。

 大阪府立大学の教授を務めている友人の来訪を受け、山の家で過ごした12月3日、山々はところどころに名残りの紅葉を見せながらも、箱館山の頂には雪さえ積もり、農園からはるかに望む福井の山々は白く輝いていました。

 この日は時雨が通り過ぎたかと思うとさっと陽が射します。ときどき、驚くほどの強い北風がゴオーと音をたてて、山の家のまわりの木々に残っている色づいた葉や枯れ葉を天高く巻き上げ、林中に広げて降らすのです。やっと訪れた自分の季節を、冬が楽しんでいるのでしょう。

 追伸です。
 わが農園で取れたジャンボカボチャの活躍ぶりをご紹介します。
 例年どおり開催された大阪府老人大学の文化祭(11月18日、19日)にドレスアップして展示され、横に置かれたオモチャカボチャと比較する「ジャンボカボチャの重さ当てクイズ」が行われました。挑戦者は約300名。「ピタリ賞」2人、「近いで賞」18人の方々にかわいらしい賞品が贈呈され、大いに盛り上がりました。

ジャンボカボチャ
ジャンボカボチャを出品。真ん中の小さいのがオモチャカボチャ。ぬいぐるみは賞品です

 もう1個のジャンボカボチャは、女性たちの発案で「パンプキンスープ」にして来訪者に提供することになり、1週間かけてレシピづくりや準備をすすめました。ノコギリで切り分けられたジャンボカボチャを20人の女性たちが持ち帰り、レシピに沿ってスープにして持ち寄りました。このスープは温められて、700人の人たちに提供され「おいしいおいしい」と好評を得たのです。女性たちの大活躍のお陰で、わが農園のジャンボカボチャは存在を認められて喜んでいることでしょう。
 展示されていたジャンボカボチャは、1人の学生さんの手で大和川を渡り大阪南部の高石市立老人福祉施設に届けられました。昨年のジャンボカボチャは、老人大学近くの保育園で子どもたちのお友だちになり、今年はお年寄りに頭を撫でていただいて喜ばれているということです。本当につくってよかったと私たちもうれしくなります。




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■4月の農園 (2006/04/15)

 

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ソバの畑   今津港   ダイコンの初収穫
収穫間近いソバの畑。白い花がみえるでしょうか 琵琶湖西岸、今津港の晩秋。竹生島への船が就航しています   ダイコンの初収穫。少し曲がっているのもご愛嬌

■11月の農園 (2006/11/15)

 10月15日の日曜日、やっと孫たちと日を合わせてサツマイモ掘りに農園へ出かけました。
 あたりのソバ畑はまだ白い花をいっぱいに咲かせていましたが、地際の鮮やかな紅色をした茎に、菱形の茶色い実が付き始めています。
 ソバの実りは下のほうから進み、その実がこぼれるようになると、上のほうではまだ花が残っていても収穫するそうです。もうひと月もすれば収穫です。新ソバが取れたらソバ粉を買って孫たちとソバ打ちをしましょう。

 高さを増した青空を背景に、コスモスとススキが小川の堤で風に吹かれ、農園の前のソバ畑の真っ白な花たちが陽光を受けてまぶしいほどです。

 そんな風景の中で、私たちはサツマイモのツルを切って芋掘りの準備をし、大津から自動車でやってくる娘家族を待っていました。移りゆく季節の一瞬の彩りに包まれて、そこにいるだけで幸せなひとときです。
 孫たちがやってきましたが、双子の男の子の一人が車から降りてきません。「ばあが起こしてくれないと芋掘らへんぞお」と大声で叫びながら車のシートにしがみついています。バタバタしている足に長靴を履かせ、脇の下をちょっとこそばして抱き起こしてやると、いたずらそうな目をしてニッと笑いました。

孫たちとイモ掘り そんな3年生坊主たちですが、昨年まではお父さんの仕事だったのに、「僕が先だよ」と競い合って芋の株起こしをしてくれました。大きなスコップを株の少し外に差し込み、スコップの縁に足を掛けて体重をのせて揺すります。こうしておくと芋が掘りやすくなるのです。おかげで40株ほどのイモ掘りがあっという間に終わり、孫たちの成長ぶりに驚かされました。

 その後は、おばあちゃん出題の「野菜クイズ」です。ひと畝に並んで、畝いっぱいに青々とした葉を広げている野菜たちの名前を当てるのです。葉の形が違うダイコンは判りやすいのですが、ハクサイ・キャベツ・カリフラワー・ブロッコリーは同じアブラナ科の仲間。少しずつ葉の色や形は違うのですが、この時期に見分けるのは難しいようです。6年生のお姉ちゃんも加わって「これはキャベツ!」「違うよ。カリフラワーだよ」とひととき楽しく遊びました。

 掘り上げたばかりのサツマイモや、まだ収穫が続いている秋ナスとピーマンなども収穫し、自動車に積み込んで帰路につきました。大津へ帰った孫たちは、さっそくご近所やお友だちの家にサツマイモをお届けして喜ばれたそうです。

 私たちはサツマイモをダンボール箱に詰めて、青森の息子家族と息子の連れ合いの里、北海道へ宅配便で送りました。2日後北海道から「お芋ありがとうございます。さっそく焼き芋にしていただきます」と電話がありました。
 青函トンネルを抜けたところにある福島町ですが、家の裏に津軽海峡が広がるこのお宅では、10月中旬から鉄製の丸い大きな石油ストーブが焚かれているそうです。ストーブの上は平らになっていて、やかんや煮物の鍋などをのせていますが、そこにアルミホイルで包んだサツマイモをのせておくとほくほくに焼き上がって、漁から帰ってこられたお父さんが「冷え切った体が温まるし、本当においしい」と喜んでくださるそうです。

 「丸ゆでしたジャガイモもアルミホイルに包んでのせておきます。まわりが少し焦げた頃に、バターや塩で食べるとおいしいですよ」というお話に、吹雪にかすむ津軽海峡を窓越しに眺めながら、ストーブを囲んであつあつのお芋を食べてみたくなりました。
 
 その後も、老人大学の学生さんたちのグループが1週間おきに3組、芋掘りに農園を訪れてくれました。その中の一組は女性ばかりのグループでしたが、バス停まで迎えにいった和雄の軽トラックを見て、「子どもの頃のように荷台に乗ってみたい」とせがまれて困りました。「おまわりさんに叱られますから」と何度も話し、やっと断念してもらい、農園までのたんぼ道をにぎやかに歩いてもらいました。

 芋掘りを楽しんだ後、隣の畑で収穫期を迎えていた赤カブをいただき、リュックに詰めたサツマイモと赤カブの重さに音を上げながら、「欲と道連れ」と大笑いです。和雄にとっては、仲間と過ごす畑でのこんな時間が最高の楽しみなのです。

 ハクサイが巻き始め、ダイコンが太っているだろう畑の様子が目に浮かび、残っているサツマイモの収穫も気になりだしていたとき、友だちから電話があり「服部さんちの畑に行きたい」というのです。日程を調整して11月2日、私たちと友だち2人で農園に出かけました。

 秋の気配を探しながら湖西道路を走りました。比良山系では頂上あたりに紅葉の気配を感じる程度でしたが、道路沿いのイチョウやメタセコイアは黄色く色付きはじめ、ススキとセイタカアワダチソウの群生がやわらかい光を受けて風にゆれ、秋を演出していました。

 近江今津に入るとすぐに「もうソバが実ってる」と、ソバの白い花を楽しみにしていた友だちが声をあげました。まだ白く見えるソバ畑もありましたが、ほとんどの畑は先端部分に少し花を残すだけになり、収穫の時期を迎えようとしています。

ハクサイの初収穫 農園の野菜たちは見事に育ち、ハクサイ3株とダイコン6本、ブロッコリー1個を初収穫しました。カリフラワーも大きく広げた深緑の葉の真ん中に、こぶしほどの真っ白な花蕾(からい)を付けています。キャベツもかわいく巻き始め、丸ダイコンも野球のボールくらいに育っていました。

 ピーマンは少し小さくなった実をいっぱいに付け、まだ花を咲かせています。友だちが、真っ赤になったピーマンをかじりながらバケツに2杯ほども収穫し、「ピーマンはえらいね」としきりに感心しています。7月から収穫が始まり、霜が降りてずるけて(いたんで)しまう11月の終わり頃まで、続けて収穫できるピーマンは家庭菜園の優等生です。

大きく育ったシロナ 軟弱野菜の畝では、取り残していたコマツナとシロナが驚くほど大きくなっていました。コマツナを見て「オオマツナになっている」とひとしきり大笑いです。大きさも株張りも、スーパーで売っているものの2〜3倍もある菜っ葉たちですが、さっとゆでて油揚げと煮たり、中華風の味で炒めると、食べ応えがあってじつにおいしいのです。
 持ち帰った友だちから、翌朝早速「あんなに大きいのに、やわらかくておいしいので驚いたわ」と電話があったほどです。

 収穫物を友だちと分け合って袋に詰め、あらためて広々と広がる風景を見渡し、一面に広がる若草色の田んぼに気付きました。この前きたときには、収穫を終えた田んぼにひこ生えが出てはいましたが、茶褐色が主役の風景が広がり、むしろその色に秋を感じていたのに、今日は若草色のジュウタンを敷き詰めたようにやわらかくやさしい風景なのです。早生の稲がつくられていた田んぼなのでしょうか、小さな稲穂さえ出ています。

 11月5日付けの日本農業新聞に、「野のたより」というこんな記事を見付けました。
 「11月初めになると、ほぼ全国的に稲刈りが終わる。風景にも、冬の色を感じる。しかし、霜が降りるまでのわずかな期間であるが、刈り取った稲の切り株から春の新芽を思わせる青葉が出てくる。これを稲孫(ひつじ)と呼んでいる。全体に広がっている様子が『ひつじ田』」。

 どうして「ひつじ」と読むのだろうという疑問が残っていますが、誰が言い出したものか、稲の孫とは何てかわいくてやさしい表現でしょう。冬を迎える前のひとときの輝きに気付くことができて幸せでした。

 夏の終わり頃から、いつ咲くのかと楽しみにしていた「ミゾソバ」が、濃いピンクと淡いピンクの小さな花をいっぱい付けて、農園前の小川の水際で咲いているのをやっと見付けました。この花も、季節を彩るひとつの輝きです。

アズキの乾燥 私たちの農園の近くの畑で大量に栽培されていたアズキが、大きな干し場に干されていました。アズキが干し上がった後、この干し場には、漬物用のダイコンや赤カブが干されることでしょう。もうすぐ霜が降り、きびしい季節を迎える湖西の風景です。


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■4月の農園 (2006/04/15)

 
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10月の畑   サツマイモ初収穫   カンピョウ(ユウガオ)の実
収穫を待つ今年の秋野菜。右隣の畝はサツマイモです サツマイモの初収穫。今はもっと大きく育っていますが雨で収穫が遅れています   「ヒョウタンにコマ」ならぬ「スイカにカンピョウ」?
くわしくはこちら

■10月の農園 (2006/10/15)

 九州地方に大きな被害を残した大型台風13号が北に抜け、秋雨前線が弱まった9月20日頃からは、湖北地方にもさわやかな秋晴れが続き、日中の陽差しはまだまだきびしいけれど、ほほを撫でて吹く風に夏の疲れが癒されるようになりました。

 台風の通過を待って、9月21日にダイコンの間引きと軟弱野菜の2回目のタネまきに農園に出かけました。
 あたりはすっかり秋らしくなり、ダイコンのタネまきをした9月6日には、出たばかりの穂を2、3本見付けるのがやっとだったススキが、小川の堤でもたくさんの穂を出し、咲きそろったコスモスといっしょに心地よさそうに風に吹かれてゆれていました。

満開のソバ畑
白い花におおわれたソバ畑

 あたりの稲田は7割方刈り取られ、集団転作で植えられたダイズ畑も葉が黄ばみ、稲刈りが終われば収穫が始まることでしょう。ソバ畑では、真っ白な可憐な花が咲き始めています。
 生長を眺め続けてきた農園の前の水田も、稲刈りが終わってきれいに耕耘され、その後まかれたソバが生えそろって、やわらかそうな緑のソバ畑に変わりました。農園の隣の畑では、おじいさんとおばあさんがつくっておられるアズキが黄色い花をたくさん付けています。

 このアズキは、まだまだ暑かったお盆明けに、日除けのために背中にござをのせ、汗水たらしながらお二人でタネをまかれたものです。今年も収穫どきになれば、畑に座り込んで根気よくサヤをむしるおばあさんの姿をお見かけすることでしょう。昨年その姿を見たときに、大地に溶け込み土と生きる農婦の姿そのままだと強い印象を受けたことを思い出します。

 収穫されたアズキは京都の菓子舗に買い取られるとのことですが、お正月のあんころ餅にもなって、家族に幸せを分けることだろうと思いながらアズキの花を写真に収めました。

 9月26日、朝から少し冷たくて久しぶりに靴下を履きました。雨戸を開けると庭の隅にたった一輪、ヒガンバナが朝日を受けて凛と咲いています。「ああ、お彼岸だったんだ」と、あらためて庭の木々を眺めました。サルスベリは名残惜しそうにまだ花を付けていますが、その横ではハナミズキが葉を紅葉させ始め、小さな実も真っ赤に熟れて小鳥たちがついばんでいます。しかし、庭の隅に植わっているキンモクセイはまだ蕾も付けていません。甘酸っぱい香りを楽しませてくれるのはいつ頃になるのでしょうか。

 秋分の日(9月23日)とその前後3日間の1週間が秋の彼岸で、真ん中の秋分の日を「彼岸の中日」といいます。「お彼岸」という声を聞くと、子どもの頃母がよくつくってくれた「おはぎ」の甘さが口の中に甦ってくるから不思議です。

 トマトとゴーヤの後かたづけとダイコンやハクサイなどの生長ぶりが確認したくて農園へ出かけた10月4日。高くなった青空に少し白雲が浮かび、箱館山からはときどき、帽子も飛ばされそうなほどの勢いで秋風が下りてきて、本当にさわやかで美しい秋の一日でした。

 稲刈りの終わった田んぼは荒起こしされ、掘り起こされた稲の株が陽光を浴びて秋の色です。ところどころに20pほどにもひこばえが伸びた若緑の田と、刈り遅れて稲穂の黄色を濃くした田が点在し、広い広い野間は秋の途中の風景です。車で走っていると、ときどき満開を迎えたソバ畑の白い花の輝きや、葉が黄色から茶色に変わり、刈りどきを迎えているダイズ畑が目に入ります。

アズキの実 先日、黄色い花をたくさん付けていた隣の畑のアズキは、もう10pもありそうな細長いサヤを何本も付けて実を太らせ始めています。

 私たちの農園も主役が変わりました。ダイコンは特有の切れ葉をいっぱいに広げて畝をおおうほどになり、そろそろ根も太り始めているようです。ハクサイとキャベツは葉を巻き始め、9月の初めにタネをまいたコマツナは初収穫ができました。その続きにまいておいたニンジンが、やっと2〜3pほどのか細い苗に育ち、まわりの草を抜いてやるとかわいい苗の行列が姿を見せてくれました。なんだかうれしそうな姿。

ダイコン
葉を茂らせたダイコン

 収穫どきを迎えたサツマイモが農園の真ん中に陣取って、芋掘りにきてくれる孫たちや老人大学の人たちを待っています。早く芋掘りの段取りをしましょう。
 夏からずっと収穫してきたナスとピーマンはまだがんばってくれています。この日も、ナス20個とピーマンを台所用のポリ袋に一杯収穫しました。

 ピーマンはきっと霜が降りるまで収穫できるでしょうし、ナスも少なくなったけれどまだ紫の花を咲かせています。その花に真っ赤なトンボが止まって秋風に吹かれていました。

 中秋の名月の10月6日は低気圧で荒れ模様です。能勢町の農家女性から届いた見事な「能勢クリ」をゆで、ススキと萩といっしょに窓際に供えましたが、雲が厚くおおっています。何度も窓越しに空を見上げ、やっと雲の切れ間から透き通るように輝く大きな月が姿を現してくれたのは8時過ぎでした。その時を逃さないように、ガラス戸を開けて手を合わせました。「孫たちが元気で大きくなりますように」とお祈りしたとき、庭の片隅のキンモクセイの香りに気付きました。今年は咲いてくれないのかとあきらめかけていたキンモクセイの小さな花たちが、月の光の中であの心地よい香りを放っています。名月の素敵な贈り物。

 翌7日は土曜日です。雨かも知れないという天気予報を気にしながら、孫たちを誘って芋掘りに農園へ出かけましたが、やっぱり悪天候です。陽が射して白波を立てる琵琶湖を一瞬輝かせたかと思う間に、ザァーと雨が落ちてきます。

ジャンボカボチャ
子供ほどもあるカボチャ

 とうとう芋掘りを諦めて、山の家でジャンボカボチャと遊んで過ごしました。50sを目指したジャンボカボチャは、残念ながら35sほどのものが3個と20sほどのもの1個の収穫で終わりましたが、ハロウィンのときに子供たちが楽しむよう、孫たちの家と孫たちが通う学童保育所に1個ずつ届けました。老人大学の文化祭にも展示できるかもしれません。
 芋掘りは来週のお楽しみです。あわてずゆっくりと秋を楽しみましょう。


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■4月の農園 (2006/04/15)

 
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9月の田んぼ     お手伝い
収穫間近の稲田です。品種はハナエチゼン。先月はこんな様子でした。   暑い盛りに手伝いに来てくれた孫たち。よく日焼けしてます

■9月の農園 (2006/09/15)

 春夏野菜の準備をするときは、雪解けとともに土づくりをし、3月に入ってジャガイモを植え付けたら、5月の連休までゆっくりと栽培計画を練り直し、タネや資材の準備などを進めることができます。
 ところが、秋冬野菜の場合は、エダマメやトウモロコシなどを収穫した畑をすぐに片付け、土づくりをしてから肥料を入れ、畝立てを済ませるのに、お盆から9月の初めまでのわずか20日ほどしかありません。

 この時期にはまだ、トマト、ナス、ピーマン、スイカ、カボチャなどの収穫も続いています。さらに、厳しい残暑の時期に当たるため、朝夕の涼しいわずかな時間にしか農作業ができないので、大変な忙しさです。

 とくに、この暑い時期にトウモロコシの後始末をするのは大変です。防鳥ネットを片づけ、太い根が土中深くまでがっちりと入っている太くて硬い茎を、1本1本引き抜く作業は男だけにしかできない力のいる仕事です。汗まみれになって作業をしていると、栽培本数を少なくすれば、こんな大変な作業が少なくて済むのにと思ってしまいます。

 しかし、取りたてのおいしい味が忘れられず、また、さし上げた方々から「こんなにおいしいトウモロコシ食べたん初めてや」という言葉を聞くと、毎年、200本は植えることになってしまうのです。今年もお盆休みに、孫たちに夏野菜の収穫まかせて、和雄は2日かけて枯れて硬いトウモロコシの株を、汗まみれになりながら引き抜きました。

 少し朝夕に涼風が立ち始めた8月21日、ふたりで秋冬野菜のために予定している畑の土づくりに農園を訪れました。
 農園に着いて驚きました。サツマイモの葉がコオロギに食べられて穴だらけになっているのです。お盆の時に引き抜いたトウモロコシの古株を、無精してサツマイモの横に積んで置いたのが大失敗。そこがコオロギの絶好の住みかになり、サツマイモの葉をたっぷり食べて大発生してしまったようです。あわててトウモロコシの古株の処分をしましたが、今年も孫たちが大喜びするような大きなサツマイモが入ってくれるかどうか心配です。

テイラーで耕耘 この作業に愛子の手が取られてしまったため、秋野菜の植え付けを予定している、502の畑の草削りと土づくりは和雄の肩にかかりました。ときどき愛子も手を貸しながら草削りをしたあと、一度テイラーで耕耘し、牛糞80sと苦土石灰6sを畝全面に振り、もう一度よく耕耘して整地をするのです。ダイコンを植える所はできるだけ深く耕耘し、しかもていねいに整地する必要があるので、33℃を超す炎天下に何回もテイラーで往復しました。この作業はじつにきつい仕事です。

 ジャガイモを収穫したあと夏草に占領されていた畑は、柔らかそうな黒土の畝に変わりました。サツマイモの畝の横を埋めていたトウモロコシの古株も片づいて、ちょっと涼しげになった農園で、最上段に残っている赤く熟れたトマトをもいで食べました。たっぷりの甘酸っぱい水分が乾いたのどを潤し、疲れた体の隅々まで広がっていきました。

 やっとひと息ついて、あたりの風景を見渡しました。ずいぶんと高くなったように思える青空のもと、一面の稲田は濃い緑から黄金色までのあらゆる色合いに染め分けて、順番に刈り取られる稔りの秋を待ちわびているいるようです。生長を見つめ続けてきた農園前の田んぼでは、ハナエチゼンが黄金色に熟れて、今か今かと刈り時を待っています。

 小川の土手では、夏から秋にかけて咲くツユクサの紫の花とイヌタデの赤い実が小さな風景をつくっていました。私の大好きなミゾソバも、どこかでピンクの可愛い花を咲かせているかもしれません。
 山の家のまわりではタラが白い花をいっぱいに咲かせ、秋の訪れを待ちわびているようです。

 8月25日付けの日本農業新聞に、「昨日、近江米を初出荷(滋賀・JA今津町)、極早生品種ハナエチゼン1,800袋(54トン)」という記事が載っていました。

荒起こしされた田
荒起こしのすんだ田

 農園のまわりでもいよいよ稲刈りが始まったのかと思いながら、秋野菜のための施肥と耕耘に農園に出かけた26日、いつも決めて写真を撮ってきた田んぼはすでに刈り取られて、きれいに荒起こしされていました。


 秋雨前線が近づき、やっと秋らしくなってきた9月6日、午後から雨が降るとの天気予報に急がされて、朝早くから秋冬野菜のタネまきと苗の植え付けに出かけました。今年は長ダイコン150本(青果用100本、漬物用50本)、丸ダイコン10本に、ハクサイ50株、キャベツ30株、カリフラワー10株、ブロッコリー5株とミズナ、コカブラ、大阪シロナ、コマツナ、シュンギク、ホウレンソウなどの軟弱野菜とニンジンをつくります。

ハクサイの苗を植える
ハクサイを植える

 自動車で自宅を7時前に出発し、雨雲に追われるように農園へ急ぎました。途中、比良山が琵琶湖に迫るあたりで雨がフロントガラスを濡らしましたが、なんとか持ちこたえてくれました。道路脇に立っている温度表示板は23℃を表示し、一昨日からすると10℃も低い気温です。この涼しさに助けられて、軟弱野菜やニンジン、ダイコンのタネまきとハクサイやキャベツなどの苗の植え付けを午前中に済ませ、ナス、ピーマン、ゴーヤを収穫しました。

不織布でトンネルを掛ける もうしばらく、ナスやピーマン、ゴーヤは収穫できそうですが、老人大学の学生さんたちの応援もあって、スイカとカボチャのあとも片づきました。ゴマがサヤを太らせ、トウガラシが真っ赤に色づき、味噌用の晩生のダイズがサヤを付け始めています。軟弱野菜のタネをまいたところに不織布でトンネルを掛け終わると、少し秋の農園らしくなりました。
 もう1ヵ月もすると軟弱野菜が収穫でき、2ヵ月するとダイコンやハクサイがいただけるのですから、自然の恵みはじつに豊かです。


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■4月の農園 (2006/04/15)


 
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8月の田んぼ   夏の琵琶湖   コシヒカリの花
お盆過ぎになると、この田んぼもそろそろ収穫です。先月の様子と比べてみてください 夏の琵琶湖。すこし靄(もや)がかかっている様子がわかるでしょうか   コシヒカリに花がついています。とても小さな花なので見えにくいのですがご勘弁
夏野菜の収穫   老人大学28期生   ナスの夏剪定
これが1日の収穫。本当はもっと採れるのですが、翌日の老大生のために残しました 老人大学28期生のみなさん。43名がバスを仕立てて訪れてくれました   手元が見えていませんが、ナスの夏剪定を実演。座学では伝えられないこともあります


■8月の農園 (2006/08/15)

 ネムノキの花が盛りを過ぎて色あせ、その足下にはノカンゾウがすっくと伸びて、濃いオレンジ色のユリに似た花を咲かせています。農家の庭先ではムクゲの花がゆれ、ミソハギの花さえ咲き始めて真夏の太陽を待ちわびているのに、7月20日を過ぎても梅雨が明ける気配もありません。田んぼの稲はぐっと背丈をのばし、雨風の流れを映して波打っています。

 例年なら梅雨が明けているはずのこの時期に、梅雨前線が活発になり大雨が続いて各地域に被害をもたらし、自然の猛威を見せつけるニュースが流れています。私たちの農園でも、大きくなってきたスイカが水に浸かって腐っていないかと心配しながら、梅雨明けを待ちわびる7月下旬でした。

やっと梅雨明けかと思われた7月27日、朝早く大阪を発って農園へ向かいました。夏らしさを増した日光に温められて、昨日までの雨をたっぷりと含んだ山々から靄(もや)が立ちのぼり、山々の中腹あたりをやんわりと抱きかかえ、琵琶湖の湖面も全面から水蒸気を発散して春のように靄に覆い尽くされています。

 しかし、農園に着いた頃には、強烈な太陽が湿気を空高く持ち去ってすっきりと晴れ上がり、箱館山の緑と青空を背景に農園も稲田も夏色に輝いていました。7月20日にきたときには気配さえなかったのに、農園の前の田んぼは稲穂をすっくと立ち上げ、頭を少し下げかけているのですから驚きます。

 小川に掛けてある丸太をおそるおそる渡って稲穂に近づいてみました。一粒一粒がしっかりと膨らみ、若緑の柔らかそうな粒に小さな花殻(はながら)を付けています。1週間見なかっただけなのに、もう青年期を過ぎて子孫を育てる準備に励んでいるのです。ぜひ、小さな花を見たいと思っていたのに、いつの間に花を咲かせていたのでしょう。ちょっぴり残念です。

 この田んぼは8月20日前後には収穫され、早場米として初出荷される早生種の「ハナエチゼン」です。近江米の代表的な品種「コシヒカリ」はまだ花を付けていないので、今度は見逃さないように気をつけましょう。

 長い長い梅雨のお陰で、孫たちの大切な黄色いメロンが何個か腐ってしまったり、ピーマンに尻腐れのような症状が出たり、トウモロコシの実の一部が腐ってしまいました。また、スイカの受精が悪かったのか、例年の半分ほどしか実を付けていません。しかし、その他の野菜たちは長雨をくぐり抜けて、たくましく育っています。

 早速ナス、キュウリ、トマト、サンドマメ、エダマメ、トウモロコシ、スイカ、メロン、カボチャ、赤シソと少しのニンジンを収穫しました。ゴマも薄いピンクと紫の花を咲かせ、トウガラシもつんつんと空に向かってたくさんの実を付けています。
 ジャンボカボチャも見事な実を4つ太らせています。目標の50sにいくかどうかまだわかりませんが、今年はちょっと期待できそうです。

 帰り道の琵琶湖は空を映して真っ青に染まり、真夏の太陽のもと少し白波を立てていました。琵琶湖大橋を渡って湖岸道路を走り、琵琶湖博物館の風力発電用の風車と琵琶湖を右手に見ながら、瀬田の唐橋(からはし)や建部大社(たけべたいしゃ)の近くの孫たちの家に立ち寄りました。

 娘夫婦は仕事、3人の孫たちは学童保育で留守ですが、玄関を入ったところに、孫たちの大好きなメロンとスイカを真ん中に、野菜たちをきれいに並べて帰りました。夜、孫から「おばあちゃん、ゴンキツネがきて野菜を置いていったよ」と電話がありました。
 家に帰り着いたゴンキツネは、翌日農園を訪れてくれる老人大学の学生さんたちや、夏休み中の孫たちのためにシソジュースをたっぷりとつくりました。

 翌28日は、一層夏らしい日になりました。大阪万博記念公園のそばにある大阪府老人大学から、43人の学生さんたちを乗せた大型観光バスが出発したのは午前9時、目的地は服部農園です。先日も卒業生の方々のマイクロバスでの訪問はありましたが、大型バスによる訪問は前代未聞のできごとです。

 11時過ぎ、出迎えた和雄も含めて農園は膨れあがり、隣の畑でアズキのタネをまいていたおばあちゃんも野菜たちもびっくりです。早速、トウモロコシやエダマメを収穫した後、秋ナスを収穫するための夏剪定の実演をしました。
 そして、山の家まで長い行列をつくって田んぼ道をたどり、2qほどの道を、田舎の空気をいっぱい吸いながら歩いてもらいました。

 緑とセミしぐれに包まれた山の家で、窓をいっぱいに開け放っての昼食です。それぞれに持参された手づくりのお弁当と、もぎたてのエダマメやトウモロコシの塩ゆで、それに冷えたビールと井戸水で冷やしたスイカや井戸水で薄めたシソジュースにみなさん大満足でした。 


 8月に入ってからは暑い暑い夏空が続きます。3つの台風が北上しているという天気予報を聞いて、台風に見舞われる前にお盆にお供えする野菜を収穫しようと、8日の早朝から農園に出かけました。

 すっきりと晴れ上がった青空に真っ白い雲が浮かび、台風の気配などない炎天下で、ナス、キュウリ、サンドマメ、ピーマン、スイカ、エダマメと、取り残していたトウモロコシを収穫し、お供え用にサツマイモを試し掘りしました。
 まだまだ小さいけれど4本の収穫があり、お供えするには十分です。 

 草に追われ、手入れも行き届きにくい私たちの農園ですが、暮らしの折々に本当にうれしい収穫を提供してくれ、食べる楽しさを満喫させてくれます。
 また、親しく訪れてくださる方々のお陰で、野菜を育てる喜びを何倍にもしていただいて、私たちは本当に幸せです。

 
スイカを食べる   お土産
ちょっとお行儀が悪かったかな。でもこれが作り主に許されるぜいたく 老大生のみなさんには、トウモロコシとエダマメをお土産に持って帰ってもらいました


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■4月の農園 (2006/04/15)


 
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7月の水田   ネムノキの花   ナスくらべ
水面が見えなくなるほどに若苗が育っています。上を歩いて渡れそうな濃い緑 ネムノキの花が満開です。この花が咲くと間もなく梅雨が明けるといわれています   「こっちのほうが大きいぞ」。食べるには大きくなりすぎたナスですが、子供たちは大喜び
ジャガイモの収穫   トウモロコシの防鳥ネット   ジャンボカボチャ
家族そろってジャガイモの収穫。愛子おばあちゃんのいちばんの楽しみ トウモロコシに防鳥網をかける。背が高いので実際にはふたりがかりの作業です   自慢のジャンボカボチャもここまで育っています。今年はどこまで大きくなるかな



■7月の農園 (2006/07/15)

 6月も末になると梅雨空のもと、山々の緑が一層深くなりました。田んぼの苗たちもしっかりと分けつして株を張り、水面が見えないほどに一面緑です。

 この時期の水稲は、稲穂をつける茎数を増やすために分けつし、たくさんの根を出して大地をつかみ、生長する準備を怠りなく行います。梅雨が明ければ、夏の太陽の恵みを受けて一気に背丈を伸ばし、たくさんの小さな白い花を密かに咲かせ、その一つひとつの花が米粒となって秋には豊かな稔りをもたらすのです。

 わが家の5人の孫たちも、ちょうど梅雨どきの苗たちと同じ時期を迎えているようです。みんな小学生ですが、電話をしてもいつも忙しそうで「おばあちゃん、今忙しいよ」と叱られることが多くなりました。きっと、それぞれの個性を主張しながら、いっぱいいっぱいにその時を過ごしているのでしょう。

 7月8日、梅雨の晴れ間をねらって農園へ出かけました。集落のあちらこちらに、色とりどりのアジサイがまだまだ私の季節ですといいたげに咲き誇っていましたが、山沿いの湖西道路では、満開の花をつけたネムノキが主役を勤め、梅雨明けの近いことを教えてくれているようでした。

 この日は孫たちもやってきて、最盛期を迎えた夏野菜の収穫とジャガイモ掘りをしました。めいめいにハサミを持って農園に入り、お姉ちゃんはキュウリとサンドマメを収穫しました。双子の弟たちは畝の両側に分かれて、ナスとトマトの収穫です。大きくなり過ぎたナスに大喜び、小さいナスも摘み取って、すぐに大きなコンテナがいっぱいになりました。

 ナスとキュウリは6月中旬から収穫が始まり、毎週キュウリ50本とナス50個以上を収穫。わが家は野菜づくしのキリギリス状態で、うれしい悲鳴を上げています。トマトも1段目と2段目の収穫が始まり、3段目が色づき始めています。6月末には花をいっぱい咲かせ、その中に小さな実をやっと2つ見付けることができたサンドマメも、今は収穫が追いつかないほどの実りです。

 カボチャとスイカは2畝分の畑いっぱいにツルを伸ばし、カボチャは直径20pほどの実を5つ付け、育ちの早さをアピールしていますが、まだまだ肌は柔らかくて収穫するには早そうです。スイカも20pを超える大きさになった実が、ツルの間から頭を上げ、カラスやキツネに見付かりそうなので畝全面にネットを張りました。

 孫娘が楽しみにしているマッカ(マクワウリ)も花盛りです。ツルを持ち上げて探してみると、小さな実が2つできていました。さっそく「大きいほうは私のマッカ」とお姉ちゃん。「じゃあ、これは僕たち半分こ」と、双子の男の子たちがツバをつけました。おばあちゃんは「おいしい実に育ちますように」と心の中で祈りました。

 野菜の収穫が一段落ついたので、いよいよジャガイモ掘りです。今年は男爵、メークイン、キタアカリ、アンデスの4品種を、合わせて200株植えたので収穫が大変です。枯れかけているジャガイモの茎を両手で持って引き抜くと、いろんな大きさのジャガイモが土から顔を出します。その後、ジャガイモに傷が付かないようにまわりの土をやさしく掘り、残っているジャガイモを掘り上げます。掘りたての新ジャガは色白で皮が薄く、土とすれるだけでも皮がむけてしまいそうです。

 今年のジャガイモは、天候不順にもかかわらず大豊作で、大きなコンテナにたっぷり2杯の収穫がありました。早速、山の家で塩ゆでにし、井戸水で冷やしたとりたてのトマト・キュウリといっしょに昼食にしました。和雄と私は、皮をむいてそのままの塩ゆでジャガイモと、完熟したトマトとキュウリに塩をかけただけで十分に食べる喜びを味わいました。孫たちは、山のようにゆで上がったジャガイモにバターをつけて、あっという間に平らげました。

 収穫したジャガイモや夏野菜を半分ずつにして、娘家族の家とわが家に持ち帰りました。夕方自宅に帰り着くと、早速「お友達のお家まで、一人で野菜をあげにいってきたよ。みんなありがとうっていってたよ」と孫たちから電話がありました。私たちもダンボール箱を用意し、ジャガイモとお菓子を詰め合わせ、青森に住む息子夫婦と2人の孫たちに送る準備をしています。


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■4月の農園 (2006/04/15)


 
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  トマトの花   ジャガイモの花
コマツナが収穫直前です。奥のほうに見えているのは夏ダイコン 子どもの日に苗を植え付けたトマトに、かれんな花がつきました   こちらはジャガイモの花。3月中旬に200株植え、今月下旬から収穫にかかります
 
イチゴの収穫   6月農園全景
真っ赤なイチゴをたっぷり収穫。このイチゴで孫たちに愛の押し売りをします この写真のために2日がかりで草削りをした農園。苗が育ってくるとにぎやかに

■6月の農園 (2006/06/15)

 山々の緑が少し深さを増したような、5月の終わりの雨の日に農園へ出かけました。山の家の周りの林も緑が厚みを増し、ハコネウツギが彩りよく花をつけ、その足下にはシャガの花が雨に濡れ、清楚な雰囲気を漂わせていました。

 山の家は、高さ15mほどもあるクヌギの緑に包まれ、デッキには枯れた花の房が降り敷いています。秋にはドングリをいっぱい落として、孫たちを喜ばせてくれるでしょう。冬の間雪に痛めつけられていたヤマボウシも、枝いっぱいに白い花を付け、あたりは初夏の風景です。

 農園ではアスパラガスが太い首をにょきにょきと伸ばし、夏ダイコンやコカブラ、コマツナが間引けるようになり、よい収穫がありました。なかなか芽を出してくれなかったニンジンと赤シソもかわいい芽を並べ、これからの生長が楽しみです。

 子どもの日に孫たちと植えた夏野菜の苗たちも、雨の日が多く日照不足を心配していたのに、がっちりと育ってビニールの囲いから頭をのぞかせています。
 早速囲いをはずして、キュウリとサンドマメにはしっかりした支柱を立ててネットを張ってやりました。

 もうすぐ梅雨入りかと報道されるようになった6月5日に、イチゴの収穫と夏野菜の管理をしようと農園に出かけました。山々の緑は濃さをまし、山裾にはウノハナの白い花が咲いています。「卯の花の匂う垣根に、……夏は来ぬ」という歌が思い出される風景です。

 農園に着いて目に飛び込んできたのはかわいい実をたくさん付けたイチゴです。まっ赤に熟れた実を思わず口に入れました。強くなった陽差しに温められていましたが、さわやかな甘味とみずみずしさが体に染みていきました。早速イチゴを摘み取ると、3粒ほどは虫に食べられていましたが、孫たちが喜ぶには十分な収穫がありました。

 夏野菜たちも大きく育って花を付けています。ナスとトマトとカボチャは小さな実を膨らませ、葉は勢いよく強い陽差しを楽しんでいるようです。ジャガイモは淡いピンクとムラサキの花をすっくと立ち上げ、一列に並んでラインダンスをしています。6月の末には収穫ができそうです。

 ナスとトマトの伸びてきた枝を支柱に誘引し、キュウリのツルをネットに這わせ、まだ小さいスイカの苗に水をたっぷり与えました。伸びてきたトウモロコシの周りには、箱館山からの吹き下ろしの風に倒されないよう、ヒモを張ってやりました。

 ひと仕事終わって背を伸ばし、思いっきり伸びをしました。辺りの水田では苗が株を張り始めて力強さを増し、緑も濃くなりました。これからの梅雨と暑い夏迎えて、立派に生長する準備を整え終えたよと言っているようにさえ見えるたくましさです。

 ほどよく育った夏ダイコンと小カブラとコマツナも収穫して帰路につきました。途中、大津市の孫たちの家に寄り、ザルいっぱいのイチゴを洗って食卓にのせ、野菜たちのお裾分けも目に付くところに置きました。学校から帰ってきた孫たちや、職場から帰ってきた娘夫婦が喜ぶ様子が目に浮かびます。おじいちゃんとおばあちゃんの愛の押し売りかもしれません。


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■4月の農園 (2006/04/15)


 
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エドヒガンザクラ   田植え真っ盛り   孫たちと夏野菜を植える
エドヒガンザクラの古木に淡紅色の花が満開 農園をお借りしている農家の田植え。10ヘクタールもの水田を耕作しているそうです   孫たちが植えてくれているのはトマトの苗です
 
タラノメ   新緑に包まれた山の家
4月の下旬にとったタラノメ。てんぷらがおいしい いま山の家は新しい緑に包まれています


■5月の農園 (2006/05/15)

 近江今津(おうみいまづ)では3月の末まで雪が降り、4月の10日頃になってやっと遅い春がやってきたと思っていたら、足どりを速めた春は一気に野山に広がり、4月中旬には桜が満開。山の家のまわりにある「エドヒガンザクラ」の古木が、淡いピンクの花に覆われ見事です。

 こんな春の勢いの中で、農園のまわりの田んぼは耕耘され、見る間に水が張られて代かきが進み、20日過ぎには早生種「ハナエチゼン」の田植えが始まりました。孫たちと夏野菜の苗の植え付けに出かけた5月の連休は、田植えの最盛期でした。昔なら梅雨時の1ヵ月はかかったと思われる広い田んぼも、田植機のエンジン音がひびきわたったのは10日間ほどでしょうか、アッという間に田植えが終わりました。

 さわやかな風がサァーと通り過ぎ、かわいい早苗が行儀良く並んだ水面にさざ波をたて、苗たちをゆらしていきます。田んぼで鳴くカエルの声が高くなり、空ではヒバリが縄張りを主張し、田水すれすれにツバメたちが飛び交っています。まわりの山々では、木々が少しずつ色合いの違う新緑に覆われ、もこもことしたモザイク模様を描いて初夏の風情です。

 そんな季節の流れの中で、「子どもの日」に孫たちと夏野菜の苗を植えました。農協に注文しておいたナス、トマト、ピーマン、シシトウ、キュウリ、カボチャ、スイカ、マクワの苗たちは、大きくなった孫たちに手際よく植え付けられ、たっぷりと水もかけてもらいました。お父さんに手伝ってもらいながら、風よけと保温のためにビニールの肥料袋や紙のキャップをかぶせる仕事も、最後までやりぬきました。ともに作業をするたびに、子どもたちの成長の早さに驚き大きな喜びを味わうことができて幸せです。

 子どもの日には、ジャンボカボチャの苗を携えた老人大学卒業生の方々の訪問もあって、苗の植え付けが終わった後、いっしょに楽しく食事をしました。
 孫たちと摘んだイタドリ、ヤマブキ、ヨモギ、タラノメと、農園で収穫したグリーンアスパラガスのてんぷら。ワラビのおひたし、ネギの酢味噌和えとおにぎりの質素な食事ですが、孫たちがてんぷらを揚げてお客さまに運んでくれ、楽しいひと時を過ごしました。

 田植えの季節になると、亡くなった母のことをよく思い出します。
 子どもの頃から、米には「お」と「さん」をつけて「おこめさん」と呼んできました。
 私は大阪の町に生まれ農家育ちではありませんが、「おこめさん」は何よりも大切なものと教えられて育ちました。「おこめさんはお百姓さんが八十八回も手をかけて、汗水たらしつくってくださったものだから、一粒でも粗末にすると罰があたる」というのが農家で育った母の口癖で、こぼしたご飯粒も拾って食べないと叱られました。米を大切にすることをとおして、人の苦労に感謝し、物を大切にすることをしっかりと教えられたように思います。

 稲作が日本の文化の根っこにある大切なものだということも、日々の暮らしや農園との係わりの中で、孫たちにしっかりと伝えていきたいものです。


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■4月の農園 (2006/04/15)


 
(画像をクリックすると拡大します)
タネイモ植え付け   愛子とテーラー   21人の学生さん
タネイモの植え付け。孫たちが手伝ってくれます
テーラーをおす愛子。雨の中の作業です   老人大学の学生たちが、21人も手伝いにきてくれました
 
孫と農作業   学生さんと農作業
孫たちと農作業。この日はまだ寒かった 長い長い畝。学生のみなさんの手を借りて


■4月の農園 (2006/04/15)

 4月の陽差しは何と暖かく伸びやかでしょう。この陽差しに誘われて芽吹きはじめた山々が、生き生きと存在感を増し、野には春の恵みが溢れます。

 私たちの山の家と農園のある近江今津(おうみいまづ)は、湖西に位置していますが湖北に近く雪深い里です。12月から降り積もった雪が1mを越えていた農園にやっと春が訪れ、雪解けを待ってニンジン、キャベツ、丸ダイコンなどを掘り出し、ジャガイモの植え付け準備をしたのが3月8日でした。 

 その後も冬はしつこく居座り続け、土づくりとジャガイモの植え付けをしようと、農園へ出かけた3月18日、19日にも雪を降らせ、箱館山の頂上辺りを雪化粧しました。しかし、平地にまでは積もることができず、やっとあきらめたように冬は去っていきました。

 この3月18日、19日に、春の嵐の合間をぬって軽トラック2台分の牛ふんと苦土石灰をまき、耕耘機で耕しました。雪まじりの雨に追われるように孫たちといっしょにジャガイモの植え付けを済ませ、マルチを張り終えるとやっと農園らしくなり、雨模様の中でも、天高くピーピーチィチィーとさえずるヒバリの声も似合います。

 4月1日には春・夏野菜の栽培計画表を見ながら畝ごとに目印を付け、そこに植える野菜に必要な元肥を入れて耕耘し畝立てをしました。7日には、和雄が担任をしていた大阪府老人大学園芸環境科の卒業生のみなさんが21人も農作業の応援に農園を訪れ、マルチ張りと草けずりをし、豪雪で倒れていた山の家の4mもあるコニファーを、力を合わせて引きおこしてくれました。大勢の手で、見る間に春・夏野菜の植え付け準備が整い、荒れていた山の家の庭も生気を吹き返したようです。
 さあ、時の流れに遅れないように軟弱野菜のタネをまきましょう。

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