野菜と土壌成分

野菜栽培に適する土壌

 野菜は他の作物と比べて生育が早く、養分や水分の吸収量が多く、肥沃(ひよく)で保水性のよい土を好みます。
 ところが多くの野菜の根は細くてやわらかいため、過湿や乾燥に弱く、また、土中の養分が多すぎても根がいたむなど、さまざまな障害が出やすいのです。したがって野菜を育てる土は、根が安定して養分を吸収できるように排水性通気性保水性がよく、適度な養分を保っていることが大切です。

 砂の多い土は保水性が悪いために乾燥害を受けやすく、しかも養分保持力が弱いため、与えた肥料が流亡したり、早く効き過ぎて生育後半に肥切れを起こしやすくなります。また、肥料を一度に多く与えると濃度障害が出やすくなります。
 したがって砂の多い土では、保水性と養分保持力を高めるための土壌の改善が必要です。

 粘土の多い土は保水力がよく、水不足になりにくいですが、一方、通気性が悪いため根が酸素不足を起こしていたみやすいのです。また養分を保持する力が強いため肥切れは起こしにくいですが、生育の後半に肥料が効き過ぎて徒長をまねくことがあります。
 したがって、粘土の多い土では排水性・通気性を高めるための土壌の改善が必要です。



土壌成分不均衡による連作障害

 野菜は豆類、葉菜類、根菜類、果菜類などその種類が極めて多く、種類によって養分の成分別吸収量がちがうため、必要な肥料の施用量も成分も異なります。
 とくに多肥を要求する野菜が連作された場合、そこに残った肥料分に不均衡を生じ、ある成分は過剰、ある成分は不足になります。このとき、成分の不足や過剰が生育の制限因子となって悪影響を与えます。

 成分の不足と過剰、いずれの場合もきっちりした土壌診断を行い、施肥設計や連作障害対策を立てることが必要となります。
 あわせて、地力をいっそう増強するために、堆肥などの有機物苦土石灰などの土壌改良資材をバランスよく施用することが大切です。



有機物施用の効果

 土壌改良の基本となるのは、わら・家畜ふん尿・その他有機物を堆積腐熟させた堆肥を入れることです。堆肥は肥料効果以外に、次のような土壌改良効果を持っています。


未分解の粗大有機物(微生物の分解をあまり受けていない、形の大きな残渣(ざんさ)などの有機物の断片)が土壌に孔隙(こうげき=すきま)をつくるため通気性がよくなります。
有機物の微生物分解で生まれる腐植物質によって、土壌の団粒構造が発達します(土の粒が集まって小さな団子のようになること。土がふかふかになります)。
土壌が柔らかくなり通気性や保水力が向上します。
腐植物質によって土壌に肥料が保持されやすくなります。
5 有機物が徐々に分解されて、土壌のチッソ供給力が高まります。
腐植物質がアルミニウムと結合してリン酸の吸収が促進されます。

 野菜を栽培すると、根と一緒に土が持ち出されたり雨などで流されたりして、1年に102当たり10sの土がなくなるといわれています。このため、理想的には102当たり20〜30sの堆肥を毎年補給してやる必要があります。
 これらの土壌改良効果は施用してすぐに現れないため、効果が出るまでに何年も施用し続ける必要があります。