ダイコンとハクサイに共通する留意点

ダイコン、ハクサイともに冷涼な気候を好みます。私たちの農園がある近江今津の三谷地区では9月7日、大阪府茨木市の山間部では9月1日がダイコンのタネをまく日と言い伝えられています。



生育の特徴

どちらも冷涼な気候を好むとはいえ、生育初期には低温を嫌い、結球期や肥大期には高温を嫌います。
しかし、結球期や肥大期の温度が低すぎた場合は、寒害を受けたり、気候の変化を敏感に感じて花芽分化し、とう立ち、開花することがありますので、タネまきや苗の植え付け時期に気を付けます。

また、栽培の主要な作業(間引き、土寄せ、病害虫防除など)が、タネまきや苗の植え付け後40日くらいの間に集中します。この時期の作業を適期を逃がさず行うことが、上手に作れるかどうかのポイントになります。


品種の選択

種苗店からいろんな新しい品種が発売されています。種苗カタログなどを調べて、生育の早晩生、花芽分化やとう立ちの性質、耐暑性、耐寒性、耐病性などの特性を考えながら、用途に応じた品質のよい品種を選択しましょう。


初期の生育と葉の展開

いずれも子葉はハ−ト形で、開くとともに葉緑素があらわれて緑色となり、光合成を始めます。子葉の役割は大きく、子葉に障害があると初期生育が抑えられます。このため間引くときは、きれいなハ−ト形の子葉が出た芽を残すようにします。
子葉が開いた後は、すでに生長点で分化していた葉が生長し始め、次々と新しい葉が展開していきます。ハクサイの葉は、はじめは葉の幅が狭くて葉柄の長い縦長の葉ですが、生育が進むにつれて丸みを帯びてきます。
ダイコンは、第1葉は切れ込みが少なく、第3〜4葉から品種特有の葉がでるようになります。

耕耘・整地

ハクサイの根は非常に細く、根は広く深く、深さ1m、幅3mにも広がるといわれています。ダイコンは地下部を真っ直ぐに伸ばし、よく肥大させることが大切です。このため、「大根十耕(だいこんじっこう)」といわれ、深さ30p以上まで十分に耕すことが必要です。
したがって、どちらの場合もタネまき前に、よく耕してていねいに整地することが必要です。耕耘(こううん)・整地が不十分であると土がかたくなって酸素が不足し、根の伸長がさまたげられてしまいます。


栽植密度

間を広くとると、株に十分日光が当たり光合成が高まります。このため、1株の重量は大きくなりますが栽植本数が少なくなるため、面積あたりの収量は低下します。反対に、株間を狭くして栽植本数を多くすると、1株の重量は小さくなりますが、収量はある程度まで多くなります。しかし、限度を越えて栽植本数を多くすると、株が過密になり光合成が低下し、収量は逆に減少してしまいます。それぞれの野菜に見合った株間を取ることが大切なのです。

標準的な
栽植密度
 うね幅 株間
ハクサイ  60〜70p 40〜45p 1条植え
ダイコン  90p 20〜25p 2条まき



間引き

間引きは生育をそろえるための大切な作業です。これまで間引きのおもな目的は、奇形になったものを取り除き、形の整った優れた苗を残すことでしたが、現在では育種技術が向上し、奇形などの変形した芽はほとんど出なくなりました。このため、生育の良いものを残すようにします。
なお、アブラナ科野菜は、生育初期にはある程度密生していた方が生育が順調にすすみます。これを「共育ち」(ともそだち)といいます。

間引きの時期が早すぎると、風害や豪雨などの影響、病害虫の被害で欠株を生じてしまいます。反対に間引きが遅れると、茎葉がこみあって徒長し、その後の生育が悪くなるので、間引きは適期に行うことが大切です。
間引き後は、茎が風などで動いて傷ついたり曲がったりしないように、必ず土寄せをおこないます。

中耕、除草、防除

株間を耕す中耕は、土を軟らかくして通気性をよくし、根の発達をうながして雑草の発生も防ぐなどの効果があります。除草や追肥の作業の時にいっしょにおこないます。
とくに、ダイコンやハクサイは生育初期に雑草の発生が多くなると、生育が目に見えて悪くなるので、雑草の発生を抑えることが大切です。
また、病害虫の発生が多いため、防除はきわめて大切で、これらの野菜を無農薬で栽培することは非常に困難です。私は、発生初期を中心に殺虫剤を数回散布します。
■農薬をほどこす回数や時期、使ってよい作物などは、農薬ごとに決められています。ラベルをよく読んで適正に使用しましょう。

農薬による防除に頼るだけでなく、輪作をする、カンレイシャ(寒冷紗)などの被覆資材を使う、耐病性品種を利用するなどの対策を組み合わせて、病害虫の発生を抑えましょう。