『中国古典文学挿画集成(十)小説集〔四〕』
本体46,000円+税
ISBN978-4-86361-029-3
B5判上製貼箱入/408頁
刊行のことば
瀧本 弘之
二〇〇九年七月の『小説集』[一]から二〇一四年の『小説集』[三]に紹介した通俗小説、歴史演義小説などは二十近いが、まだまだ中国古典文学にちりばめられた挿画を把握するには十分とは言いがたい。
今回は、前回に続き明の初期から出版文化の中心として数多くの小説戯曲本を産出した金陵(南京)出版の版本を取り上げる。英雄・岳飛の活躍を描いた『大宋中興演義』、明王朝の創設者・朱元璋とその仲間の活躍を語る『英烈傳』、万暦時代の四川における叛乱を描いた時事小説『征播奏捷傳通俗演義』、そして『三国志演義』のヒーロー・関羽について述べた『漢壽亭侯誌』を合わせて刊行することとした。
前二者の画工は金陵版画の代表的画家・王少淮で、『新刻出像官板大字西遊記』などであまりにも有名である。また『漢壽亭侯誌』は、元雑劇などはで知られるものの『三国志演義』にはその場面が掲載されない、貂蝉とのやりとりの挿絵が大きく掲載されている。もちろん世界初公刊であり「珍本」といえよう。これらと『英烈傳』の内閣文庫本と中国国家図書館本の同時掲載は特筆に値するだろう。
執筆者略歴
瀧本弘之(編・解題)
著述家、中国版画研究家。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。編著書に『蘇州版画』(駸々堂・共著、1992年)、『清朝北京都市大図典』(遊子館 1998年)、『中国古典文学挿画集成』[一]―[九](遊子館、1999-2013年)『中国歴史名勝大図典』(遊子館 2003年)、『中国歴史人物大図典』(遊子館 2004年)、『中国抗日戦争時期新興版画史の研究』(研文出版・共著 2007年)、『近代中国美術の胎動』(勉誠出版 2013年)など。
上原究一(解題)
山梨大学大学院総合研究部准教授。東京大学大学院人文社会系研究科中国語中国文学専門分野博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員PD(慶應義塾大学附属研究所斯道文庫)を経て、2015年4月より現職。論文に「金陵書坊周曰校万巻楼仁寿堂と周氏大業堂の関係について」(『斯道文庫論集』第48輯、2014年)など。
松浦智子(解題)
名城大学理工学部助教。早稲田大学大学院文学研究科中国語・中国文学専攻博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員DC2(早稲田大学)、同PD
(埼玉大学)を経て、2013年4月より現職。論文に「楊家将の系譜と石碑―楊家将故事発展との関わりから」(『日本中国学会報』第63集、2011年)、著書に『楊家将演義 読本』『完訳 楊家将演義』上下(岡崎由美・松浦智子共編・共訳、勉誠出版、2015年)などがある。
■掲載資料・解題一覧■
- 漢壽亭侯誌八卷
万暦28年(1600)序刊〔金陵〕唐貞予刊 国立国会図書館蔵 - 新刋大宋中興通俗演義八卷附二卷
〔万暦前期〕刊 金陵周氏万巻楼刊 王少淮画 国立公文書館内閣文庫蔵
- 新刻皇明開運輯略武功名世英烈傳六卷
〔万暦〕刊 建陽余氏三台舘覆〔金陵周氏〕刊 王少淮画 国立公文書館内閣文庫蔵 - 新刻皇明開運輯略武功名世英烈傳六卷
〔万暦〕刊〔金陵周氏〕刊 王少淮画 中国国家図書館蔵 - 新刻全像音詮征播奏捷傳通俗演義六卷
万暦31年(1603)刊 佳麗書林重刊 京都大学文学部図書館蔵
- [解題1]瀧本弘之「金陵版画の一側面」
- [解題2]上原究一「唐貞予刊本『漢壽亭侯誌』とその挿画の特徴について」
- [解題3]上原究一「『大宋中興演義』と『皇明英列伝』の王少淮双面連式挿画本をめぐって」
- [解題4]松浦智子「『征播奏捷伝通俗演義』の挿画について」