日照を十分受けることは、丈夫に育ち花もちも良く、球根の肥大にも欠かせない大切な条件です。このため、植え付ける場所は日当たりの良い、水はけの良好な場所を選びます。
しかし、家庭では場所が限られているのであまり難しく考えず、単に花を咲かせて楽しむだけであれば、半日くらいの日当たりがあれば十分につくれます。通気性と水はけをよくするためには、花壇や花畑をレンガやブロックで囲い、通路より一段高くして水がたまらないようにすればよいでしよう。
土は肥沃で通気性に富み、適当な保水性が必要です。乾くとコチコチに固まるような土には、堆肥や腐葉土、パーライト、バーミキュライトなどを2割程度加えると改善されます。
植え付けの深さ、間隔は球根の種類によってちがいますが、一般的に大きな球根は広く深く、小さな球根は狭く浅くします。
だいたいの目安として、深さは球根の厚み(高さ)の1〜2倍、間隔は球根の直径(横幅)の3〜4倍くらいです。しかし、鉢やプランターに植え付ける場合は、根を張らせるための土の量を確保するために深く植えずに、球根の頂部が軽く土に隠れる程度とし、間隔も鑑賞上の調和を優先させて密に植え付けます。チューリップは5号鉢に3球程度、プランターに10球程度です。
チューリップやクロッカスの球根は横向きに植えようと逆さまに植えようと生育には影響がありません。広い花壇などに植えるときには、植え溝を掘ってバラまきするだけでも十分です。
しかし、スイセンやヒヤシンスは逆さまに植えると生育が悪くなるので、必ず頂部を上にして植え付ける必要があります。
肥料は、元肥としてゆっくりと効く緩効性の肥料(マグアンプK、IB化成など)を、花壇1m2当たり100g程度与え、土とよく混ぜます。追肥は、春先芽の出揃った頃に、また球根を残す場合は花が済んだ直後に、カリ成分を多く含んだ肥料を与えます。
種類ごとの秋植え球根のつくり方はそれぞれのコーナーをお読み下さい。
チューリップ
チューリップは球根を植え付ける秋までに、球根のなかに翌春の葉や蕾ができており、花を咲かせる養分も蓄えられているので、球根の良し悪しが生育に大きく影響します。同じ品種でも、大きな球根はそれだけ生育がよく大きな花を咲かせます。持ってみて重く感じるような充実したもので、キズやカビや病気の斑点のないものを選ぶことが大切です。なお、外皮の有無は生育や開花に関係しません。
植え付けは10月下旬〜11月上旬。これより早く植えても気温が下がらないと根が伸びませんし、これより遅く植えると冬までに十分根を張らせることができないので、植え付け時期に注意しましょう。
早咲きの品種は3月下旬〜4月上旬に開花し、中生は4月上〜下旬、遅咲きは4月下旬〜5月上旬に開花します。入学式など開花して欲しい日に合わせて品種を選ぶことが大事です。
土は耕土の深い砂質壌土が良く、球根の2倍ほどの深さに20p間隔で植え付けるのが標準です。
[この記事の花の一覧へ]
ユリ
ユリは、自生していた環境により生育条件が大きく変わり、テッポウユリ、オニユリ、スカシユリは日当たりのよい場所が適し、ヤマユリ、カノコユリ、ササユリは半日陰のほうが生育もよく花色も鮮明になります。また、ユリの多くは幾分砂を含んだ粘質壌土がよいのですが、ヤマユリ、カノコユリ、ササユリは腐植質に富んだ膨潤な土を好みます。
植え付け時期は10月上旬〜11月下旬です。ユリの球根の下部から出る根は、下根(基根)といって球根が土から浮き上がるのを防ぐ役割を果たし、球根の上部から地上までに出る根を上根(茎根)といって、この根が養分を吸収します。このため球の大きさの3倍(15p)程度の深さに植え付けます。なお、球根は毎年掘り上げず、衰弱し始めたら4〜5年に一度植え替えます。
テッポウユリ |
|
ユリの代表格。奄美諸島と沖縄諸島が元々の自生地。10月中旬に植え付け。粘質がかった畑土がよい。1m2に5〜9球。アブラムシに注意。 |
ヤマユリ |
|
東北から関西地方にかけて自生。海外に球根を輸出している。 |
スカシユリ |
|
日本では江戸時代初期から栽培されてきた園芸種。15pに1球、深さ10p。4号鉢に2球、5号鉢に3球程度。 |
オニユリ |
|
2mくらいの高さになる。7月下旬〜8月上旬に開花。小石まじりの粘質土がよい。半日陰に耐える。球根は食用になる。 |
カノコユリ |
|
1mの高さになる。7月中旬〜8月中旬に開花。半日陰を好む。 |
ササユリ |
|
日本特産。中部以西、四国、九州の一部に自生。5月中旬〜8月上旬に開花。 |
[この記事の花の一覧へ]
アネモネ
9月下旬〜10月下旬に植え付けます。水はけのよい砂質壌土を好みます。粘質土では球根が腐りやすく花つきも悪くなるので、粘質土の場合は、必ず腐葉土かピートモスを入れます。12〜15p間隔に、球根が少し隠れる程度の浅植えにします。5号鉢では3球程度植え付けます。
なお、球根は円錐形で上下を間違いやすいので、必ずとがっているほうを下、平らな面を上にして植え付けます。
開花後は花を早めに摘み取り、株を弱らせないようにすると、次々に花が咲いて長期間楽しむことができます。
[この記事の花の一覧へ]
スイセン
スイセンはラッパスイセン、大杯スイセン、小杯スイセン、八重咲きスイセン、房咲きスイセン、クチベニスイセンなど12種類に分類されています。
日本では年末から早春にかけて咲き、切り花にされるニホンスイセンを中心に約20品種が栽培されています。もっとも親しまれているニホンスイセンは、元々は地中海沿岸地方が原産で、中国を経て渡来し、日本で野生化したものだといわれています。
日当たりがよく、水はけのよい場所を好みます。9月下旬〜10月下旬に、15p間隔、深さ10p程度に植え付けます。2〜3年はそのまま植えておいてもいいのですが、次第に花が咲かなくなったら植え替えます。球根の肥大期が終わった6月下旬に掘り上げ、秋まで貯蔵します。
[この記事の花の一覧へ]
アイリス
アイリスの属するイリス属には、根茎を持つものと鱗茎を持つものとがあります。根茎を持つイリス属はジャーマン・アイリスを中心に宿根草に分類され、鱗茎を持つイリス属は球根アイリスと呼ばれ、ダッチ・アイリスが代表的です。
9月下旬〜10月下旬にかけて、排水のよい砂壌土に10〜15p間隔、深さは球根の2倍ほどに植え付けます。
[この記事の花の一覧へ]
フリージア
連作を嫌うので毎年新しい土に植え付けます。また、寒さに弱いので、冬でも日当たりがよく、霜よけしやすい場所を選びます。
10月に、間隔6〜10p、覆土は2p程度の浅植えにします。鉢植えの場合は5号鉢に5球、6号鉢に7球程度を植え、フレームや軒下などで栽培します。
[この記事の花の一覧へ]
アリウム
生花などでよく使われるネギ坊主のことです。極端な多湿、乾燥を避ければあまり土質を選びません。
9月上旬〜10月下旬に球根の5〜6倍の間隔、球根の2〜3倍の深さにに植え付けます。花茎が非常に柔らかいので、思い通りの形に変形させることができます。
なお、2〜3年はそのまま植えておいても大丈夫です。
[この記事の花の一覧へ]
ヒヤシンス
10月上旬〜11月中旬に植え付けます。12p間隔、深さは球根の3倍程度です。鉢の場合は5号鉢に1球植え付けます。
[この記事の花の一覧へ]
クロッカス
日当たりのよい砂壌土が適します。10月に球根の2倍程度の間隔に植え付けます。深さは、新球が母球の上につくられるので球根の2倍は必要です。毎年掘り起こさず、2〜3年はそのままにしておいても大丈夫です。
花が終わったら花だけを摘み取るのではなく、勢いのよい芽を2〜3本だけ残し、あとは掻き取っておくと、土中に残った新球の肥大がよくなります。
また、ネット袋に水ゴケをやや硬めに丸くつめて、その上半分に10〜15球程度の球根を植え込み、乾かさないようにときどき水をやっておけば、春に花のボールができます。
[この記事の花の一覧へ]
|