『万葉びとの心と言葉の事典』
本体15,000円+税
ISBN978-4-86361-017-0
B5判・上製本・約370頁(内口絵4頁)
言葉はいつも時代の空気を呼吸して生きている。
万葉の言葉(318語)と、万葉集をはじめとする古代の歌(1340余首)から読み解く
万葉びとの生活と文化、心と言葉
- 万葉の言葉 318語/和歌1340余首
- 古筆口絵5点/挿図 250点
- 和歌索引・和語索引・人名索引
「著者のことば」より
わたくしは、『万葉びとの心と言葉の事典』と題して、『万葉集』に表れる言葉の意味を考えてきた。単なる辞書的な解説にとどめず、わたくしは、言葉の本当の意味を解明するためには、万葉びとがどのような環境で発言したかを調べることが、一番大切だと思っている。言葉にこめる感情が、いかなるものかを注意深く観察しなければ、その言葉の真意やニュアンスは本当にはわからないものだと思っている。それ故、本書では、歌の作者が置かれている歴史的な環境が、言葉を選ぶ際の微妙な心理状態に如何なる影響を与えるかを明らかにしようと試みたのである。従来のように、言葉の言語的な解釈より、歴史的記事にからめた解説が多くなっているのはそのためである。言葉は、つねに生き続けているが、同じ言葉でも、異なる環境では一変してしまうことも事実である。つまり、言葉はいつも時代の空気を呼吸して生きているのである。
言葉はもともと、認識したものを示すものであるが、そのものをどのように表現するかを知ることによって、その感受性が明らかにされるのである。「言が事」であるというのはその意味からである。言葉が端的にもの事の認識を示しているからである。
『万葉集』の言葉は、一見、わたくしたちの日常語とは異なるように見えるが、丹念に調べていくと、意外にも感性の根底においては、一致するものが少なくないことを思い知らされるであろう。おそらく、日本人の思惟や感性の多くは、万葉の時代に形成されていたのである。
収録「口絵」一覧
小堀遠州筆万葉集扇面、狩野元俊画人麻呂御像、明堂宗旦画人麻呂文字絵、吉井勇筆扇面和歌、沢瀉久孝筆万葉の歌
収録「万葉びとの言葉」一覧
- 【あ 行】
あかし(明石)/あかねさす(茜さす)/あきづ(秋津)/あきつかみ(現つ神)/あきづしま(秋津島)/あきの(阿騎野)/あさがほの(朝顔の)/あさぎりの(朝霧の)/あさつま(朝妻)/あさとりの(朝鳥の)/あさもよし(麻裳よし)/あしかきの(葦垣の)/あしがら(足柄)/あしはらのみづほのくに(葦原の瑞穂の国)/あしひきの/あすかがは(明日香川)/あぢさはふ/あづきなく/あづさゆみ(梓弓)/あなしかは(穴師川)/あふみ(淡海)/あまくもの(天雲の)/あまざかる(天離る)/あまづたふ(天伝ふ)/あまとぶや(天飛ぶや)/あまのはら(天の原)/あらき(殯)/あらたまの/あられふる(霰降る)/ありぎぬの(あり衣の)/ありますげ(有間菅)/あをによし(青丹よし)/あをはたの(青旗の)/いかるが(斑鳩)/いこまやま(生駒山)/いさなとり/いせ(伊勢)/いそのかみふる(石上布留)/いつも(厳つ藻)/いはせのもり(岩瀬の杜)/いはばしる(石走る)/いはひべ(斎瓮)/いめたてて(射目立てて)/うぢ(宇治)/うちなびく/うちひさす(うち日さす)/うつせみの(空蟬の)/うづらなく(鶉鳴く)/うねびやま(畝傍山)/うまさけのみわ(味酒の三輪)/うらぐはし/うらなひ(占ひ)/うらわかみ(うら若み)/うるはし(愛し)/おしてるなには(押照る難波)/おほきみはかみにしいませば(大君は神にしいませば)/おほとものみつ(大伴の御津)/おほぶねの(大船の)/おほほしく/おほまへつぎみ(大臣) - 【か 行】
かがみなす(鏡なす)/かぎろひの/かぐはし(香し)/かぐやま(香具山)/かけまくも/かすが(春日)/かすみたつかすが(霞立つ春日)/かぜをいたみ(風をいたみ)/かたみのころも(形見の衣)/かつしか(葛飾)/かづらき(葛城)/かはたれとき(かはたれ時)/かみあげ(髪上げ)/かむかぜのいせ(神風の伊勢)/かむながら(神ながら)/かむなびやま(神奈備山)/からころも(唐衣・韓衣)/かりこもの(刈り薦の)/かる(軽)/かるかやの(刈る萱の)/きこしをす(聞こし食す)/きもむかふ(肝向かふ)/くさか(日下)/くさまくら(草枕)/くしろつく(釧つく)/くにみ(国見)/くもりよの(曇り夜の)/くらはしやま(倉椅山)/けころもを/こころぐき(心ぐき)/こちたし(言痛し)/ことあげ(言挙げ)/ことしあらば(事しあらば)/ことだま(言霊)/こひ(孤悲・恋)/こひぢから(恋力)/こまにしき(高麗錦)/こもりくの/こもりぬの(隠り沼の)/ころもでの(衣手の) - 【さ 行】
さきくさの(三枝の)/ささなみのしが(楽浪の志賀)/さすたけの(さす竹の)/さにつらふ/さねかづら(さね葛)/さばへなす(五月蠅なす)/さほ(佐保)/しか(志賀)/しきしまのやまと(磯城島の大和)/しきたへの(敷妙の)/ししじもの(鹿じもの・猪じもの)/しながどり(しなが鳥)/しなてるや/しひがたり(強ひ語り)/しぶたにの(渋谿の)/しましく(暫しく)/しまつとり(島つ鳥)/しみにしこころ(染みにし心)/しらくもの(白雲の)/しろたへの(白妙の・白栲の)/すがのねの(菅の根の)/すま(須磨)/すめろぎ(天皇)/そでかへし(袖返し)/そらみつやまと(そらみつ大和) - 【た 行】
たかてらす(高照す)/たかまどやま(高円山)/たくづのの(栲綱の)/たくひれの(栲領巾の)/たたなづく(畳なづく)/たたみこも(畳薦)/たつきりの(立つ霧の)/たてやま(立山)/たまかぎる(玉かぎる)/たまかづら(玉葛)/たまきはる/たまくしげ(玉櫛笥)/たましける(玉敷ける)/たまだすきうねび(玉襷畝傍)/たまぬくたちばな(玉貫く橘)/たまのを(玉の緒)/たまほこの(玉桙の)/たまもなす(玉藻なす)/たむけ(手向け)/たもとほる(徘徊る)/たらちね(垂乳根)/たわやめ(手弱女)/ちちのみの(ちちの実の)/ちはやぶるかみ(千早振る神)/つがのきの(栂の木の)/つきくさの(月草の)/つぎねふ/つきひとをとこ(月人をとこ)/つくし(筑紫)/つくよみの(月読の)/つくよみのをちみづ(月読のをち水)/つつみなく(恙無く)/つのさはふ/つばいち(海石榴市)/つまごひに(妻恋ひに)/つまごもる(妻隠る)/つゆしもの(露霜の)/つるぎたち(剣太刀)/つれもなく/てにまきもちて(手に巻き持ちて)/とききぬの(解き衣の)/ときじき(時じき)/ときつかぜ(時つ風)/ときはなす(常磐なす)/とこのみや(常宮)/としのはに(年の端に)/としのをながく(年の緒長く)/とのぐもり(との曇り)/とぶさたて(鳥總〈朶〉立て)/とぶとりのあすか(飛ぶ鳥の明日香)/とほつかみ(遠つ神)/とほつひと(遠つ人)/とほのみかど(遠の朝廷)/とみ(跡見)/ともし/とよのしるしのゆき(豊のしるしの雪)/とりがなく(鶏が鳴く)/とりじもの(鳥じもの) - 【な 行】
なくこなす(泣く子なす)/なぐはし(名細し)/なつくさの(夏草の)/なづさひわたる(なづさひ渡る)/なつそびく(夏麻引く)/なには (難波)/なのりその/なのをしけくも(名の惜しけくも)/なめし/ならやま(奈良山)/なるかみの(鳴る神の)/にはたづみ(行潦)/にほどりの(鳰鳥の)/ぬえどりの(ぬえ鳥の)/ぬさまつり(幣奉り)/ぬばたまのよ(ぬばたまの夜)/ねぎ(ぐ)/ねのみしなかゆ(音のみし泣かゆ)/ねもころに(懇に)/のちのよの(後の世の) - 【は 行】
はしき(愛しき)/はしきやし(愛しきやし)/はしきよし(愛しきよし)/はしたての(梯立の)/はだすすき(はだ薄)/はつはつに/はつをばな(初尾花)/はなぐはし(花ぐはし)/はなたちばな(花橘)/はにやす(埴安)/はねかづら(葉根蘰)/はねずいろの(はねず色の)/はふくずの(延ふ葛の)/はやひとの(隼人の)/はるがすみ(春霞)/はるさめの(春雨の)/はるはなの(春花の)/ひぐらしの/ひこほしの(彦星の)/ひさかたの/ひとことをしげみ(人言を繁み)/ひとめおほみ(人目多み)/ひにけに(日に異に)/ひもとかず(紐解かず)/ひるめのみこと(日女の命)/ふかみるの(深海松の)/ふさたをり(ふさ手折り)/ふすまぢを(衾道を)/ふたかみやま(二上山)/ふぢなみの(藤波の)/ふふめるは(含めるは)/ふゆごもり(冬籠り)/へにもおきにも(辺にも沖にも)/ほしききみかも(欲しき君かも)/ほりえ(堀江) - 【ま 行】
まかなしみ(真愛しみ)/まくずはふ(真葛延ふ)/まぐはし(目細し)/まくらづく(枕づく)/まけながく(真日長く)/まけのまにまに(任けのまにまに)/まさきくあらば(真幸くあらば)/ますらを/まそかがみ(真澄鏡)/まそでもち(真袖もち)/またまなす(真玉なす)/まだら(斑)/まつかひも(間使ひも)/まつら(松浦)/まつろふ(服ふ・順ふ)/まなくしばなく(間なくしば鳴く)/まなご(真砂)/まひはせむ(賂はせむ)/まよごもり(繭隠り)/まよねかく(眉根掻く)/みかさやま(三笠山)/みけつくに(御食つ国)/みけむかふ(御食向かふ)/みごもりに(水隠りに)/みそぎ(禊ぎ)/みそのふ(御園生)/みちのくの(陸奥の)/みちのくま(道の隈)/みちのながてを(道の長手を)/みづかきの(瑞垣の)/みづくきの(水茎の)/みづほのくに(瑞穂の国)/みなのわた(蜷の腸)/みまくほり(見まく欲り)/みもろ(三諸・御諸)/みやばしら(宮柱)/みやびを/みわ(三輪)/むさしの(武蔵野)/むすびまつ(結び松)/むなことも(空言も・虚言も)/むらきもの(むら肝の)/むらどりの(群鳥の)/もだもあらむ(黙もあらむ)/もちくたち(望くたち)/もののふの/ももしきの(百敷の)/ももしきのおほみや(百敷の大宮)/ももたらず(百足らず)/ももづたふ(百伝ふ)/もものはな(桃の花)/もりべすゑ(守部すゑ) - 【や ・わ行】
やきたちの(焼き太刀の)/やくしほの(焼く塩の)/やすけなくに(安けなくに)/やすみしし/やそとものを(八十伴の男〈緒〉)/やましろ(山背)/やまのゐのあさきこころ(山の井の浅き心)/やまびこの(山彦の)/ゆくみづの(行く水の)/ゆくらゆくらに/ゆふだすき(木綿襷)/ゆふだたみ(木綿畳)/ゆゆしき/ゆりもあはむ(ゆりも逢はむ)/よしゑやし/よそのみに/よのほどろ(夜のほどろ)/よばひ(呼ばひ・婚ひ)/よろしなへ(宜しなへ)/よろづよに(万代に)わがせこ(我が背子)/わぎもこ(我妹子)/わすれがひ(忘れ貝)/わせをにへす(早稲を贄す)/わたつみの(海神の・綿津見の)/われはなし(我はなし)/をちかたに(遠方に・彼方に)/をちかへり(復ち返り)
組見本