遊子館歴史図像シリーズ(6)
『絵が語る知らなかった幕末明治のくらし事典』
本体3,800円+税
ISBN978-4-86361-022-4
A5判・並製352頁
ちょんまげからザンギリ頭へ!
日本人は何を失い、何を得たのか?
フィールドワークに基づく著者独自の知見を駆使し、
497点の歴史図像から解き明かす、知られざる真実!
【著者からのメッセージ】
「降る雪や 明治は遠くなりにけり」といわれて久しい。だが、江戸・東京に限らず、各地の農村漁村を歩いていると、江戸の昔の遺跡や遺物だけでなく、明治の遺跡や遺物も実に多く残されていることに気が付く。また、自分たちの祖父や祖母といった村の古老が、実際に見たり聞いたり、やってきたりしたことを、つい昨日の出来事のように話してくれることも多い。そして明治に起きた事件のうち、まだ解決せず問題を引きずっていることがいくつもある。本書では、そうした点の解明も可能な限り行った。決して「明治は遠くなった」というわけにはいかないのである。
【本書の収録項目】
- 第1章 幕末から明治への探訪
- 気前がよすぎた西郷隆盛
- 坂本龍馬の靴と刀
- 江戸のおもかげを残す明治の長谷寺
- 公然の秘密だった幕末の牛肉屋
- なぜ、「すき焼き」と呼ばれたのか
- 第2章 文明開化の探訪
- ザンギリ頭を叩いてみれば……
- 洋風建築は文明開化の牽引役だった
- 文明開化と近代化は横浜・神戸から始まった
- 人気を博した日本人発明の人力車
- 開業当初の山手線
- 文明の「速さ」がもたらした代償とは?
- 火打石からマッチへ。民有林から官林へ
- 文明開化の世の中でも、行灯が使われ続けた理由
- 石油ランプは意外と明るかった
- 自転車の普及は庶民の足を変えた!
- ゼンマイ仕掛けの扇風機〈夏知らず〉
- 膠作りから生まれた和製写真フィルム
- 第3章 新風俗の探訪
- 私たちの傍らにあった田園と女性風俗
- 洋装は文明開化の象徴の一つだった
- 女学生の制服は矢羽絣に袴だった
- 美貌はたしかな権力となった
- 幕末・明治の履物事情―革靴の上陸
- 靴は窮屈な袋だった?
- スカートめくりをする職人の動機とは
- 明治の美人コンクール
- 第4章 明治政府の施策と社会探訪
- 「解放令」は自由と平等への第一歩ではあった
- 廃仏毀釈の顚末
- 明治天皇が全国を行幸した理由
- 「野蛮」という風俗の全国一斉取締り
- 明治初期の絵解きによる軽犯罪の防止
- 見世物禁止令が出された理由とは
- 移民が進められた国内外の事情とは
- 被差別部落を分断した鉄道路線
- 危険も伴っていた明治時代の郵便事情
- 長者番付は時代を映す鏡である―日清戦争直前の財産家は?
- 森が多い日本になぜ巨木が少ないのか
- 『金色夜叉』から見える明治の構造変化とは
- 明治天皇の心労と崩御
- 文明開化を加速させた「特命全権大使米欧回覧実記」
- 第5章 事件・災害の探訪
- 「ええじゃないか」の狂乱から見えるもの
- 戊辰戦争―会津と薩長の因縁
- 絵解き史本から見取る明治の歴史観
- 明治にもあった三陸大地震と大津波
- 明治時代の大洪水と治水事業
- 第6章 都市生活の探訪
- 貧民街に住んでいた人たちの暮らしと職業
- 都市貧民の仕事のいろいろ
- 米食の普及と貧民街の残飯屋という商売
- 巡査が嫌われた理由
- 見世物小屋を覗いてみれば
- 明治初期に放火が多かった理由
- 火事の半鐘は、消防組出動の合図だった
- 火消しは火事場泥棒と野次馬の排除から
- 明治の書生の悩み事
- 貧乏書生は猫も食べた?
- 本当にうるさかった五月蠅
- 明治のトイレ事情
- 明治の庶民が丸い食卓に託したもの
- 炭も買えない生活とは?
- 明治の初めは、都市に浮浪者はいなかった
- 名人と呼ばれる職人たちが少なくなってきた背景
- 明治になっても出没した物の怪たち
- 海水浴は医療目的で奨励された
- 日本の酪農は大都市から始まった
- 第7章 地域・農村の探訪
- 飢饉でも出生率が変わらない農村力
- 雪国ならではの暮らしと知恵
- サンカと呼ばれた漂泊の人々
- キリスト教布教と被差別部落の関係
- 田舎教師が見た農村風景とは
- 子守が貧困の象徴だった理由
- 夜這いという風習のあれこれ
- アイヌと『源氏物語』の意外な関係
- 富士山は女人禁制だった
- 第8章 教育の探訪
- 明治の学生・書生にも受験地獄はあった
- 高齢者は、生きている図書館だった
- 特権化した中学校に対抗して開かれた私塾・夜学校
- 自由民権運動は教育運動改革でもあった
- 日露戦争によって軍に組み込まれた義務教育
- 第9章 庶民運動・マス-メディアの探訪
- 厳しい弾圧を受けた社会運動
- 渡良瀬遊水池に沈んだ谷中村の抵抗の記録
- 現在も続いている足尾銅山鉱毒問題
- 眠る秩父谷の農民蜂起の資料
- 女性労働者の悲哀
- 日本最初の労働組合の結成
- 落語は反権力、講談・浪曲は権力追従
- 劣情記事で部数を拡大した明治の新聞
- 影響力の大きかった新聞の功罪とは
- 明治初めの本に定価はなかった?
- 明治期の印刷と本造り—馬糞紙とは?
- 第10章 軍隊と戦争の探訪
- 明治政府の意識改革をさせたアヘン戦争
- 靖国神社の宮司の任命権を陸海軍が持っていた意味
- 兵営は総合大学という幻想
- 軍歌を替え歌にした民衆の知力
- 徴兵逃れの秘策とは
- タバコ専売制は戦費調達のためだった
- 軍靴の大量需要が靴産業を発展させた
◎ 幕末・明治という時代を知るキーワード索引