環境にやさしい土壌病害対策


病原菌が生息しにくい環境をつくり、病害を回避しましょう。


無病種苗

 土壌病害にかかっていない無病種苗ウイルスフリー苗など)が販売されているイチゴ、サツマイモ、フキなどは、これを活用するとよいでしょう。


抵抗性品種

 問題となっている土壌病害に抵抗性を持つ品種や、抵抗性台木を用いた接ぎ木苗を使うことによって被害を軽減することができます。

 アブラナ科野菜の根こぶ病抵抗性品種には品種名の頭に、キャベツではおもに「YCR」、ハクサイでは「CR」とつけられているので、これらの文字の入った名前の品種を選んで使います。 

 ナス・トマト・キュウリの青枯病、萎ちょう病、半枯病などの土壌病害対策としては接ぎ木苗を利用します。なお、台木の種類によって抵抗性が異なるので、防ぎたい病害によって台木の種類を選ぶことが大切です。

 たとえばナスの抵抗性台木に用いられる品種には、それぞれ以下のような特性があります。

台木の品種 品  種  の  特  性
赤ナス 半枯病には非常に強い抵抗性があるが、青枯病、半身萎ちょう病、ネコブセンチュウには抵抗性がない。
ツノナス 半枯病には非常に強い抵抗性があり、青枯病にもかなりの抵抗性があるが、半身萎ちょう病、ネコブセンチュウには抵抗性がない。
トルバムビガー 半身萎ちょう病、半枯病には非常に強い抵抗性があり、青枯病、ネコブセンチュウにもかなりの抵抗性がある。




対抗野菜(おとり野菜)の利用

 ハクサイ、キャベツなどアブラナ科野菜は、連作すると根こぶ病という防除の困難な生育障害を起こします。
 ところが、同じアブラナ科野菜でもダイコンは根こぶ病に対して抵抗性があり、ダイコンを栽培することによって土壌中の菌密度を下げる効果があります。

 ハクサイ、キャベツなどを植え付ける前に、葉ダイコン用の品種(小瀬菜、CR−1などの品種)を1ヵ月程度栽培し、これを収穫せずにすき込むと被害軽減効果があります。





畑に水を張って病害虫防除

 気温25〜30℃の夏期に1ヵ月程度、水田のように水を張って土壌病害虫を抑制します。

 センチュウ類は水を張ることによって、生息密度を著しく低下させることができます。
 また、土中の酸素が不足するため、酸素の豊富な土壌で活動していたキャベツ、レタス、フキ、セロリーなどの菌核病、ナスの半身萎ちょう病、キュウリのつる割れ病の病原菌が死滅しやすくなります。





太陽熱消毒・地中潅水法

 夏期にビニール等で畝を覆って土壌温度を高温に保ち、土壌中の病原菌やセンチュウ類を防除する太陽熱消毒や、地中に埋没したチューブから野菜に必要な水分だけを供給し、灰色かび病などの好湿性の病原菌を抑制する地中潅水法などがあります。




薬剤による土壌病害対策は……

 土壌消毒剤殺センチュウ剤等を用いて土壌消毒する方法もありますが、これらの薬剤はいずれも毒性が強く、しかも人畜、住宅、道路の近くでは使用できないことが多いので家庭菜園ではおすすめできません。

 また、土壌消毒剤は一時的に病害虫を少なくすることができても、同時に土壌中に存在する有用な小動物や微生物も殺してしまい、逆に病害虫の激発を招いたり土壌を悪化させるという問題もあります。

 家庭菜園における土壌消毒は、上記の太陽熱消毒冬期の寒起こしがおすすめです。