漬け菜類の特徴と栽培のポイント
ミズナ

漬け菜の栽培は長い歴史を持ち、もっとも身近な野菜のひとつです。
ここでは漬け菜類全般の特徴や、栽培のポイントをまとめてみました。

歴史

分類

生態的特徴

栽培上のポイント

作型の変化

病害虫防除




歴史

わが国へは、まず7世紀にカブラ類が導入され、その後中国などから何度かに分けていろいろな漬け菜類が渡来し、江戸時代には日本各地でそれぞれの地域にあった漬け菜類の栽培が始まり、種類の分化も進みました。明治初期にキャベツが、明治後期に結球ハクサイが栽培されるようになると漬け菜類の栽培は減少しましたが、今でも長野県の野沢菜、滋賀県の日野菜、広島県の広島菜、福岡県のかつお菜など、各地で地方野菜として栽培されている漬け菜類は50種類以上もあります。
近年は「中国野菜」としていろいろな漬け菜類が導入され、特にチンゲンサイ、タアサイなどの栽培が増えています。
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分類

漬け菜類は、中国である程度種類が分化してからわが国に渡来したものと、わが国で交雑、品種改良されたものとがあります。これらの種類はお互いに交雑して、多くの種類や品種がつくり出されています。

お も な 種 類 備  考
アブラナ類 ナタネナ、ミズカケナ 春先に花茎を食べる
ハクサイ類 大阪シロナ、マナ、サントウサイ、ヒロシマナ ハクサイの非結球種
タイサイ類 タイサイ、パクチョイ、チンゲンサイ タイサイはしゃくし菜とも呼ばれる
カブラ類 ノザワナ、ヒノナ カブの仲間で、葉だけでなく根もある程度肥大する
如月菜類 キサラギナ、ビタミンナ、タアサイ
ミズナ類 ミズナ、ミブナ わが国独特の漬け菜類
コマツナ類 コマツナ いくつかの交雑種がある


また、最近は交雑による雑種の漬け菜類や、コマツナと中国野菜との交配種も多く見られるようになっています。

千宝菜1号 コマツナ×キャベツ
千宝菜2号 コマツナ×キャベツ×ベカナ
べんり菜 コマツナ×チンゲンサイ
友好菜 コマツナ×チンゲンサイ
みこま菜 コマツナ×タアサイ

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生態的特徴

タネの大小と発芽率および生育の関係
種類や品種によってタネの大きさがかなり異なります。タネの大小と発育との関係は、一般に大粒種子ほど発芽率が高く、子葉が大きく、生育が旺盛な傾向が見られます。
タネの寿命
貯蔵条件が良ければ5〜6年。通常の家庭用冷蔵庫での低温・乾燥の状態では3年程度とされています。
発芽温度
発芽適温の幅は比較的広く、15〜35℃で1〜3日で発芽します。なお、発芽最低温度は4〜10℃とされ、低温期の発芽では日数がかかりますが、ほぼ1年中タネをまくことが可能です。
光の反応
タネの発芽には光が必要なため、覆土は厚くならないようクワで押さえる程度にします。
とう立ち(抽台)性
みこま菜 花芽分化はタネが低温にさらされると起こります。その温度は種類によって異なります。
タイサイ、大阪シロナの場合は、タネの状態で2〜3℃に15〜20日間おくと花芽分化します。冬越しの漬け菜類は冬の低温にあうため、生育の状態に関係なく3月頃にとう立ち(抽台=ちゅうだい)してきます。このため、露地栽培で11月から2月にタネをまく場合は、被覆資材を使って生育促進を図ったり、晩生種を使って抽台するまでに収穫をすませます。
なお、漬け菜類は日照時間が長くなっても花芽分化が促進されます。
耐寒性
種類によって耐寒性に差があり、強いものに大阪シロナ、マナ、タイサイなどがあり、弱いものにミブナ、ヒロシマナなどがあります。

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栽培上のポイント

土壌条件
どんな土壌でも栽培しやすく、pH5以上で生育しますが、カルシウムが必要な野菜なので、苦土石灰などで酸度矯正をしておきます。また、肥料成分では、チッソ、カリを比較的多く必要とする野菜です。
深耕、客土
数年に一度は深く耕し、作土を増やします。また、長年栽培して土壌や畑の排水が悪くなっている場合は、まさ土(真砂土)などを客土(新しい土を加えて混ぜる)して土壌の若返りをはかります。
施 肥
漬け菜類は生育期間が短いため、施肥は元肥主体にし、追肥する場合は生え揃い後なるべく早く施すようにします。露地栽培では成分量で12あたりチッソ15g、リン酸7g、カリ12g程度を基準にします(配合肥料としては80〜100g程度となります)。
また、夏に栽培するときはとくに生育期間が短いので、秋冬の栽培に比べて肥料は8割程度に減らします。

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作型の変化

漬け菜類の栽培の歴史は古く、もともとは秋にタネをまき、冬に収穫する作型が一番つくりやすく、一度霜にあてて甘みが出たところで収穫していたものです。
しかし、ビニールトンネルやハウスを利用した栽培が始まり、一年中栽培が行われるようになり、作型にあったいろいろな品種の開発も行われてきました。
漬け菜類のような軟弱野菜の栽培では、果菜類のように促成栽培や抑制栽培などの表現はなく、これまで「春まき」「秋まき」などといってきました。ところが一年中栽培を行うようになったので、秋まきでも9月にタネをまくことも11月にタネをまくこともあり、秋まき栽培という言葉は不正確な表現になってきました。また、漬け菜類は栽培時期により生育日数や形態、特性が変化する場合が多いため、現在は「○月まき」といった言葉で作型を呼んでいます。
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病害虫防除

アブラナ科野菜に共通する病害虫が発生します。漬け菜類で問題になる病害虫はコナガと根こぶ病です。

コナガの防除
漬け菜類にはコナガ、アブラムシ類、ヨトウムシ、キスジノミハムシなどの害虫がつきますが、登録のある農薬が非常に少ないので、耕種的防除(栽培法を工夫することによる防除)を中心に行います。

コナガは葉裏から表皮のみを残して食害するため、被害にあった葉は5〜10oの半透明の穴ができます。また、芯の部分が食害されると新葉の発生が止まります。

幼虫の色は淡黄色から淡緑色で、大きさは1pまでです。葉に強い振動刺激があると飛び跳ね、糸を出して地上に落下します。年10〜12回発生をくり返し、春と秋の2回発生のピークがあります。

防除方法は、被覆資材(不織布/例:商品名・タフベル)で畝全面を覆う(べたがけ)か、畝にトンネル状にかぶせます。また、畝の周囲に30〜60p高さのカンレイシャ(寒冷紗)の障壁を巡らすと効果があります。なお、被覆資材を使うと葉の色が少し淡くなるので濃緑系の品種を使い、収穫1週間前に資材を除去して、葉の色の回復に努めるなどの工夫が必要です。

また、病害虫の発生をおさえるためにタネは薄まきにし、通風をよくすること。タネをまいたら直ちに覆いのまわりの隙間から虫が入らないよう、しっかりとめておきましょう。

根こぶ病の防除
漬け菜類には根こぶ病、萎黄病(いおうびょう)、白さび病などの病害が発生します。なかでも、連作障害の大きな原因である根こぶ病などの土壌伝染性の病気が大きな問題になっています。

根こぶ病の病原菌はカビの一種で、多くのアブラナ科野菜に寄生します。根に大小不揃いのコブが多数でき、そのコブが肥大すると根からの水分の補給が十分できなくなって茎や葉の生育が悪くなり、晴天の日にはしおれます。発病適温は20〜24℃で、春と秋に多く発生します。

病原菌は土壌中では7年間ほど生存し、もっとも菌密度の高いのは、地表5p程度までだといわれています。

土壌は粘土系の土で発生が多くなり、砂土で少なくなります。地下水位の高いところや土壌水分80%以上で発生が多くなり、20%以下では発生は少なくなります。
 また、土壌のpHが4.0〜7.0で発病し、4.6〜6.5で多発します。

防除方法としては、土壌の酸度を矯正します。根こぶ病はpH6.5〜7.0で発生が少なくなりますが、高pHによる生育障害や要素の欠乏症が現れる恐れがありますので、pHを上げすぎないように細心の注意をします。

ネギやシュンギクなどのアブラナ科以外の野菜と交互に作付けして輪作したり、まさ土(真砂土)などを20pほど客土して、病原菌で汚染されていない作土をつくることも大切です。